こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
最近では自然災害も増えており、残念ながら大きな被害を受けてしまったという方もいると思います。
そうなると生活再建にかなりの時間やお金が必要になり、相当な負担になりますよね。
そこで、
・水害や地震など自然災害で被害を受けた
・火災などの被害を受けた
・泥棒に入られた
などの理由で被害を受けた場合、雑損控除を適用すれば税金の還付を受けられるかもしれません。
今回は、この雑損控除について解説します。
雑損控除の基本的な仕組み
雑損控除の対象になる場合
雑損控除の適用を受けられるかどうかは、
①被害を受けた資産は何か
②どのような被害を受けたか
がポイントになります。
それぞれ確認していきましょう。
①被害を受けた資産は何か
被害を受けたからといって、何でも雑損控除の対象にできる訳ではありません。
基本的な考え方は「生活に必要なものに被害が発生して困っている人の税金を減らして支援する」ということです。
そのため、事業用の資産(商品や事業用の設備)や別荘、一点あたり30万円以上の貴金属類・骨董品などは除かれます。
金子
そして、被害を受けた資産の持ち主が
・確定申告をする本人
・生計が同じである親族のうち所得金額が48万円以下の人
のいずれかである必要があります。
親族に所得制限があるのは、「一定以上の所得があれば、その人が自分で申告してね」という理由です。
基本的には扶養されている配偶者や子ども、高齢の親などが対象になると思います。
②どのような被害を受けたか
雑損控除が適用できるのは、次のような被害を受けた場合です。
・震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
・火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
・害虫などの生物による異常な災害
・盗難
・横領
基本的には天災や火災で自宅や家財が壊れた、盗難、横領でお金を盗られたといったところです。
ちなみに、詐欺や恐喝は除かれていますが、何でだと思います?
それは、多少なりとも本人に責任があるからです。
詐欺であればうまい話に飛びつこうとした甘さがありますし、恐喝だって毅然と対応すれば防げたかもしれません。
こういった本人の注意で防げた被害までは雑損控除の対象にはなりません。
(鍵もかけずに外出して盗難にあっても雑損控除は使えるので、不平等な感じもしますが・・・)
雑損控除の金額
雑損控除は次のいずれか大きい金額になります。
①損失の額ー所得金額×10%
②災害関連支出ー5万円
災害関連支出は、復旧のために支払った費用のことです。
また、損失額はざっくりいえば「被害額と復旧費用の合計」ですが、詳細は下記をご確認ください。
【損失の額の意味】
・「損失の額」とは、次の①+②ー③となります。
①損害を受けた資産の、その時点での価値
(家や車などの固定資産の場合、減価償却をして求めることになります)
②災害に関連して支出した金額
被災した家の修繕費用や取り壊し費用など、災害の後処理や原状回復のために必要な支出です。
③被害に対して支払われる保険金
火災保険や地震保険などから支払われる保険金は、差し引いて計算します。
・被害額は、購入した金額ではなく、その時点での価値で判断する
・固定資産の被害額は減価償却をして計算する
・保険金がおりた場合は、差し引いて被害額を計算する
といったところを理解しておきましょう。
雑損控除の計算例
計算の具体例
事例①
台風の被害を受けて、次のような被害が出ました。
被害:浸水して壊れた車100万円(減価償却後)・家財一式50万円相当、その他床上浸水や建物の破損など
災害関連支出:建物の修繕費用で300万円
保険金:建物の修繕費用は保険が支払われ、200万円受け取った
所得金額:600万円
まず、損失額ですが、車の100万円、家財の50万円、建物の修繕費用300万円の合計450万円から保険金200万円を引いた250万円となります。
また、災害関連支出は建物の修理費用の300万円から保険金200万円を差し引いた100万円になります。
では、計算式に当てはめてみましょう。
①損失の額ー所得金額×10%
250万円ー600万円×10%=190万円
②災害関連支出ー5万円
100万円ー5万円=95万円
①と②の金額のうち大きい方の190万円が雑損控除の金額となります。
事例②
空き巣に入られ、次のような被害が出ました。
盗まれたもの:現金10万円、パソコン10万円相当、時計20万円相当、宝石50万円相当。
その他の被害:破られた窓ガラスの修理費用3万円。
保険金:窓ガラスの修理費用3万円は保険金が支払われた。
所得金額:300万円
まず、被害の額ですが、現金10万円、パソコン10万円、時計20万円、窓ガラスの修理費用3万円の43万円から保険金3万円を引いた40万円となります。
宝石の50円は30万円を超える貴金属類になるため、対象外です。
では、計算式に当てはめてみましょう。
①損失の額ー所得金額×10%
40万円ー300万円×10%=10万円
②災害関連支出ー5万円
ゼロ(修理費用3万円に対して保険金3万円を受け取っているため)
そのため、10万円が雑損控除の金額となります。
まとめ
災害や盗難にはできれば遭遇したくないものですが、万が一被害にあった場合には雑損控除の適用を忘れないようにしてください。
また、被害が大きくその年の雑損控除の額が所得金額を超えるような場合は、最大で3年間繰り越すことも可能です。
いずれの場合も確定申告が必要になるので、早めの準備をしておきましょう。
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