こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
2020年の所得税の改正で基礎控除の改正と所得金額調整控除という制度が新たに始まります。
基礎控除は
・基本は48万円に引き上げ
・高所得者は基礎控除が減額される
というもの。
所得金額調整控除は
・年収850万円超の人で扶養親族などがいる場合に控除額を増やす
というもの。
これに伴って年末調整で記入する用紙にも変更があり
「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」
というとんでもなく長い名前に変更されました。
(別に正式名称は覚えなくて良いです)
ここでは
・2020年の改正内容
・基礎控除、配偶者控除、所得金額調整控除で年末調整の用紙をどう書くか
について解説していきます。
Contents
どこに何を書くのかを解説します
まず、この書類の正式名称を紹介します。
「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」です。
長すぎますよね、別に正式名称は覚えなくても良いです。
A4サイズ1枚の紙にビッシリ書くところがあるんですが、全て埋めなければいけない人は限られています。
ざっくり説明すると
・基礎控除申告書:全員が対象
・配偶者控除等申告書:年収201万円以下の配偶者がいる場合が対象
・所得金額調整控除申告書:年収850万円超の人が対象
という感じです。
独身で年収850万円以下であれば、赤枠の部分だけ書けばOKなので、だいぶ楽だと思います。
扶養する配偶者がいて、自分の年収が850万円超であれば、全て書かなきゃいけない訳ですが・・・
次は、それぞれの部分に何を書くのか解説します。
基礎控除申告書の書き方
基礎控除申告書の書き方の手順は
①自分の年収と所得(見込み)を記入
②給与以外の収入があれば、その所得(見込み)を記入
③「判定」の欄の当てはまるところにチェックをする
④「区分Ⅰ」の欄を記入する
⑤「基礎控除の額」を記入する
となります。
一つずつ見ていきましょう。
①自分の年収と所得(見込み)を記入
書類を書く時点では年収が確定していないと思いますので、あくまでも目安で記入します。
実際に1年分の給与が確定すれば、年末調整の担当者が訂正してくれるはずですので、ざっくり見込みで大丈夫です。
なお、所得金額は、次の「給与等の収入金額」から「給与所得控除額」を引いて計算します。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低金額は55万円) | |
180万円超 | 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超 | 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超 | 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
例えば、年収600万円の人の所得は
600万円ー(600万円×20%+44万円)=436万円
となります。
なお、給与所得控除は195万円が上限なので、年収900万円の人の所得は
900万円ー195万円=705万円
です。
この方の場合の記入例は次のようになります。
②給与以外の収入があれば、その所得(見込み)を記入
次に、副業などの所得があれば、そちらも記入します。
副業で30万円の所得がある場合は、このようになります。
③「判定」の欄の当てはまるところにチェックをする
④「区分Ⅰ」の欄を記入する
⑤「基礎控除の額」を記入する
こちらは一気に書けるので、該当する箇所にチェックをして、金額を記入してください。
これで基礎控除申告書の記入は終了です。
配偶者控除等申告書の書き方
配偶者控除等申告書は
・年収201万円以下の配偶者がいる
という人のみ記入が必要になります。
配偶者の所得がそれ以上だったり、独身者の人は記入する必要はありません。
手順としては
①配偶者の氏名等を記入する
②配偶者の年収と所得(見込み)を記入する
③配偶者の給与以外の所得(見込み)する
④判定欄にチェックをする
⑤判定Ⅱを記入する
⑥控除額を記入する
となります。
①配偶者の氏名等を記入する
は特に問題ないと思いますので、飛ばします。
②配偶者の年収と所得(見込み)を記入する
配偶者の年収が170万円の場合、次のようになります。
所得の計算は、基礎控除申告書で紹介した方法と同じです。表に当てはめて計算してください。
③配偶者の給与以外の所得(見込み)する
特に副業をしていない前提で記載例をご紹介します。
①〜③までの記載例はこちらです。
続いて④〜⑥です。
④判定欄にチェックをする
⑤判定Ⅱを記入する
⑥控除額を記入する
注意点ですが、
・配偶者の年齢によってチェック欄が変わる場合がある
・基礎控除申告書で記入した「判定Ⅰ」のアルファベットが関係する
という点です。
今回の例の場合は配偶者の年齢によって影響は受けないパターンで、基礎控除申告書の判定はAでしたので、次のようになります。
所得金額調整控除申告書の書き方
所得金額調整控除申告書については、具体的な金額の計算などはありません。
なお、制度の詳細についてはこちらの記事で解説しています。
参考 2020年(令和2年)の所得税から導入される所得金額調整控除とは?ソーシャル税理士金子尚弘のページ所得金額調整控除申告書で必要なことは
①該当する条件をチェックする
②該当する条件の必要事項を記入する
という2点です。
例えば、該当する条件が「23歳未満の扶養親族がいる」という場合は次のようになります。
なお、扶養親族の対象となるのは、所得が48万円以下(年収103万円以下)の親族のみです。
次に、扶養親族が特別障害者の場合は次のようになります。
特別障害者の条件に該当する場合は、障害の等級など特別障害者であることが分かる内容を記入してください。
障害者控除の内容はこちらの記事で解説しています。
参考 障害者控除って?〜基本から気を付けるポイントまで〜ソーシャル税理士金子尚弘のページ基礎控除についての改正内容など
申告書の記載方法には直接関係ありませんが、2020年の改正内容や、「そもそも基礎控除って何?」というところを説明します。
基礎控除の歴史をご紹介
基礎控除の位置付けを一言で言えば「最低生活費は非課税にする」というものです。
憲法でも保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を営むのに必要なお金を最低生活費として考えて、そのラインまでは所得税を非課税にしましょう!ということです。
ちなみに、その金額はいくらかというと・・・
38万円(年間)
です。
「嘘やん・・・絶対生活できないし。」と思うのは私だけじゃないでしょう。
ただ、元々の位置付けとしては、こういうものなのです。
ちなみに、基礎控除が導入されたのは戦後すぐの1947年で、当時の基礎控除の額は24,000円でした。
1950年の国家公務員の初任給は4,223円だったそうなので、初任給の半年分ほどは基礎控除が認められていたということになります。
これなら「最低限の生活費」と言っても良いかもしれませんが、今の時代で38万円ではさすがに・・・
2020年からの改正内容
全ての人に認められている基礎控除ですが、2020年から改正されます。
大きなポイントは
・基礎控除が48万円に引き上げ
・高所得者は制限され、所得2500万円超は基礎控除がゼロになる
の2点です。
合計所得金額 | 基礎控除の額 | |
---|---|---|
2019年分 | 2020年分以降 | |
2,400万円以下 | 38万円 (33万円) | 48万円 (43万円) |
2,400万円越 2,450万円以下 | 32万円 (29万円) | |
2,450万円越 2,500万円以下 | 16万円 (15万円) | |
2,500万円越 | ー |
*カッコ内の数字は住民税の基礎控除の金額です
*住民税を納税するのは翌年になるため、改正の影響を受けるのは2021年に納税する住民税からとなります。
なお、上記は「合計所得金額」であり、収入ではない点に注意が必要です。
ちなみに、給与収入のみの場合の所得と収入の関係は次のようになります。
合計所得金額 | 給与収入 |
2,400万円 | 2,595万円 |
2,450万円 | 2,645万円 |
2,500万円 | 2,695万円 |
ざっくり説明すると、給与収入が2,595万円を超えると基礎控除に制限が入り、2,695万円を超えるとゼロになります。
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