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家計簿ソフトのマネーフォワードMEが実質値上げ〜決算から現状を分析してみよう〜

こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。

2022年12月7日から家計簿ソフト「マネーフォワードME」のサービス内容が変更されます。

現状では無料プランでも10件まで金融機関連携が可能でしたが、変更後は4件までとなります。

つまり、金融機関連携を5件以上行っている方は影響を受けるということですね。

SNSでは色々な意見が見られますが、私なりに思うところを書いて行こうかと。

無料プランでどこまで出来るか

マネーフォワードMEが連携できるのは銀行口座だけでなく、クレジットカード、証券口座、電子マネー、ECサイト、保険契約など多岐に渡ります。

そのため、クレジットカードを複数枚保有しており、証券会社で投資しているといった方は銀行口座を含めると4件を超えてしまうでしょう。

どこまでのお金を見える化するかにもよりますが、5件以上の連携を行っている方も多いのではないでしょうか。

一方で、夫婦の個人資産はそれぞれが管理し、家計用の銀行口座とクレジットカードが1つずつのような、いわゆる「夫婦別財布」の家庭では4件でも何とかなるかもしれません。

家計管理のやり方にもよりますが、影響を受けるユーザーは多いのではないかと思います。

ちなみに、レポート機能などは劣りますがMoneytreeであれば無料プランでも50件までの連携は可能ですので、無料で使い続けたい方は乗り換えも選択肢になるかもしれません。

決算から見るマネーフォワードME

まず、マネーフォワードMEの利用者数を見てみましょう。

2022年11月期 第3四半期決算説明資料より

直近の2022年の3Qではユーザー総数が約1370万に対して有料のプレミアム課金ユーザーは約40万となっています。

ユーザー総数の中には実際には利用していないアカウントも一定数あると思われますが、有料ユーザー率は約3%です。

なお、直近ではNext Solution社(保険代理店やFP業務など)を連結対象としており、個人ドメインのコストも増加しています。決算説明資料によると1.1億円ほどの人件費増となっており、通期に換算すると4.4億円ほどでしょうか。

人件費の売上比率も増加傾向にあることが分かります。

2022年11月期 第3四半期決算説明資料より

なお、ドメインごとの利益状況は開示されていませんが、全体の決算はこのようになっています。(2022年11月期3Qと前期同月比較)

2021年2022年
売上高113億円153億円
売上原価  32億円  56億円
売上総利益  80億円  97億円
販管費  84億円160億円
営業損失    4億円  63億円

先ほど触れた人件費に加えて広告宣伝費も増加しており、まだまだ攻めの先行投資を続けているような決算になっています。

さて、個人向けサービスのマネーフォワードMEですが、関連するサービスとして保険の提案などにも力を入れています。

2022年11月期 第3四半期決算説明資料より

家計簿アプリであるマネーフォワードMEを足掛かりに保険や資産運用の相談へという導線を整えているように感じます。

当然ながら保険の提案であれば代理店収入があるでしょうし、マネーフォワードMEの有料課金にプラスした収入を狙っているのでしょう。

とはいえ、収入を上回るペースでコストが増加している状況なので、土台であるマネーフォワードMEの有料化への誘導も進めたということだと思います。

無料会員が1330万ユーザーですが、利用していないユーザーも一定数いるでしょう。仮に生きているアカウントがその1/3だとしましょう。

そうなると約440万ユーザーが実質的なユーザー数と仮定されます。

そのうち5%が有料プランに移行すれば約22万ユーザー増加し、有料プランの加入者は一気に1.5倍となります。

移行するのが2%の場合でも約9万ユーザー増加するので20%超の増加となります。

当然ながら数字は仮ですが、無料プランで幅広くユーザーを獲得し、有料化してふるいに掛けるという戦略は一気に売上を増やせる可能性もあるということです。

無料ユーザーの一定数は離脱するでしょうが、少なくとも目の前の減収リスクはありませんし、決算状況を考えると遅かれ早かれ手を付けることにはなっていたと思います。

マネーフォワードの公式noteでも次のように書かれていましたし。

データの管理・保守、サービス自体のメンテナンス、API連携のデータ反映費用といった、見える化に必要なコストが増加しており、今後本サービスを10年、20年とご利用いただくために、無料でお使いいただける内容自体を見直す必要が出てきてしまいました。

まとめ

家計簿ソフトだけでなく、会計ソフトなど様々なツールを提供しているマネーフォワードですが、経営自体はまだまだ赤字です。

マネーフォワードに限らず、サービスをリリースした当初は無料で囲い込み、有料化を促すという戦略自体は決して珍しいものではありません。

少なくともIRや決算書をチェックすれば「このままではマズいよね」ということは感じられると思います。当然ながらビジネスですから。

利用しているサブスクの運営企業が上場していれば、IR情報をチェックするのも面白いと思いますよ。

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