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休眠預金活用法とNPO〜2020年から助成事業が開始されます〜

こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。

「休眠預金」という言葉、ニュースなどで耳にしたことがあると思います。

2016年に成立した休眠預金活用法に基づき、いよいよ2020年から休眠預金が民間の公益活動に活用されることになります。

具体的には助成金としてNPOなどへ配分され、公益活動をサポートする資金として使われることとなります。

ここでは「休眠預金とはどんな制度なのか?」という点について解説したいと思います。

休眠預金ってどんなもの?

休眠預金とは、10年以上取引のない預金のことで、2009年以降に最後の取引があった預金が休眠預金活用法の制度の対象となります。

つまり、2009年の時点で長期間取引がない状態が継続している預金については、本制度の対象とはならず、2019年から初めて休眠預金が発生することになります。

本制度における休眠預金となった場合は、各金融機関から預金保険機構に移管され、公益活動に活用される流れとなります。

ただし、仮に休眠預金として扱われたとしても、実際には引き出すことは可能ですので、預金が没収される訳ではありません。

その理由は、預金保険機構において準備金が積立てられており、休眠預金の引き出しに対応できるような仕組みになっているからです。

(準備金の積立率は休眠預金の5割とされており、過去の実績から考えてもこれを超える引き出しがされることはないとみられています)

なお、休眠預金の対象になるかどうかの具体例は次のようになります。

*休眠預金等活用法Q&Aのパンフレットより転載

なお、休眠預金の対象となるものは、普通預金のほか、当座預金や定期預金なども含まれます。

一方で、外貨預金やマル優口座などは本制度の対象外となっています。

休眠預金が活用されるまでの流れ

休眠預金活用法には「優先的に解決すべき社会の諸課題」が設定されており、休眠預金はこれらの社会課題の解決に繋がる活動をしているNPOなどに助成されることとなります。

<優先的に解決すべき社会の諸課題>

① 子ども及び若者の支援に係る活動
・経済的困窮など、家庭内に課題を抱える子どもの支援
・日常生活や成長に困難を抱える子どもと若者の育成支援
・社会的課題の解決を担う若者の能力開発支援

② 日常生活または社会生活を営む上での困難を有する者の支援に関する活動
・働くことが困難な人への支援
・社会的孤立や差別の解消に向けた支援

③ 地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域の支援に関する活動
・地域の働く場づくりの支援
・安心・安全に暮らせるコミュニティづくりへの支援

助成までの流れですが、まず休眠預金が各金融機関から預金保険機構に移管され、指定活用団体(一般財団法人日本民間公益活動連携機構)に交付されます。

指定活用団体が各地域・分野の資金分配団体へ助成し、資金分配団体が最終的に事業を実施する団体(実行団体)を決定し、助成することとなります。

2019年には資金分配団体が決定しており、2019年から2020年にかけて各資金分配団体において、実行団体の公募・審査が行われます。

その後、各実行団体が助成事業を運営していくこととなります。(助成期間は3年で設定されている助成事業が多いです)

資金分配団体は草の根活動支援事業・新規企画支援事業・ソーシャルビジネス形成支援事業・災害支援事業の4分野で計24事業の募集が行われています。

NPOは自身の団体の活動領域に合致する事業に応募することとなりますが、草の根活動支援事業には地域ブロックの募集もあり、こちらは該当する地域のNPOでないと応募できない仕組みとなっています。

事業ごとの特徴ですが、草の根活動支援事業は比較的小規模(年間100〜200万円程度)の助成事業も多く、小規模のNPOでも申請しやすくなっています。

一方で、その他の支援事業では助成額が年間1000万円を超えるものも多く、対象事業が大規模なものが中心となります。そのため、一定規模以上のNPOでないと応募が難しいと思われます。

なお、各支援事業については下記の通り一覧にしていますので、ご確認ください。

草の根活動支援事業 (全国ブロック)

団体名事業名
公益財団法人お金をまわそう基金医療的ケア児と家族の夢を寄付で応援
社会福祉法人中央共同募金会当事者会のピアサポート支援事業
更生保護法人日本更生保護協会安全・安心な地域社会づくり支援事業
公益財団法人日本対がん協会がん患者支援などの事業
公益財団法人パブリックリソース財団子ども支援団体の組織基盤強化
公益財団法人ブルーシー・アンド・グリーンランド財団障害児等の体験格差解消事業
認定特定非営利活動法人まちぽっと市民社会強化活動支援事業

草の根活動支援事業 (地域ブロック)

団体名事業名
一般財団法人大阪府地域支援人権金融公社ひと・まち・げんき助成
公益財団法人佐賀未来創造基金人口減少と社会包摂型コレクティブインパクト事業
公益財団法人信頼資本財団孤立状態の人につながりをつくる
一般財団法人中部圏地域創造ファンドNPOによる協働・連携構築事業
公益財団法人長野県みらい基金地域支援と地域資源連携事業
特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター中国5県休眠預金等活用コンソーシアム
休眠預金活用事業
一般社団法人北海道総合研究調査会北海道未来社会システム創造事業
公益財団法人みらいファンド沖縄沖縄・離島の子ども派遣基金事業

新規企画支援事業 

団体名事業名
特定非営利活動法人エティック子どもの未来の為の協働促進事業
一般社団法人全国食支援活動協力会こども食堂サポート機能設置事業
公益財団法人日本国際交流センター外国ルーツ青少年未来創造事業

ソーシャルビジネス形成支援事業

団体名事業名
一般財団法人社会変革推進財団
地域活性化ソーシャルビジネス成長支援事業
公益財団法人パブリックリソース財団支援付住宅建設・人材育成事業

災害支援事業

団体名事業名
特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム台風15号・19号被災地支援プログラム
特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク中核的災害支援ネットワーク構築
社会福祉法人中央共同募金会災害時要支援者緊急支援事業
一般社団法人RCF大災害後の生活再建推進事業

まとめ

全ての資金分配団体の募集要項を紹介することはスペース的に難しいですが、草の根支援事業の地域ブロックについては公募条件に少し疑問を感じるところがあります。

例えば、中部地区の助成事業では、コーディネート団体と実行団体が組んで応募する必要があるため、そもそも1団体のみでの応募ができません。

また、助成規模もチームで3000万円(年間1000万円)となっているため、小規模のNPOでは応募が難しいでしょう。

一方で、北海道の助成事業では年間100万円規模からの助成もあり、1団体のみでの応募も可能となっており、同じ「草の根支援事業」であっても地域によって条件が大きく異なる仕組みとなっています。

休眠預金活用法の理念として「大都市その他特定の地域に集中することのないように配慮すること」と示されており、地域ブロックが導入されたのもこの理念からと思われます。

確かに、地域ごとの枠を設けて特定の地域の団体に支援が集中することは避けられるかもしれませんが、「ここまで地域差を付けてしまって良いのか?」という疑問はあります。

愛知のNPOの方とお話ししましたが、中部地区の募集条件では「これじゃ厳しいよね」という反応でしたし。

また、休眠預金の活用は今後も続いて行くことになりますが、資金分配団体を含めて、変な利権の構造ができることは避けて頂きたいな、と。

もちろん、助成事業そのものにもコストはかかりますし、適正なコストであれば問題ない訳ですが。

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