こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
NPO法人は利益を出してはいけない、ボランティアが中心だからお給料も出してはいけないと考えている人も多いようです。ただし、これらは誤解です。
NPO法人は収益を上げる事は認められていますし、スタッフにお給料を支払うことも可能です。
「非営利」というのは利益を分配できないという意味で、労働の対価を支払うことは認められています。
決して、全てがボランティアという訳ではありません。
給与を支払う際の注意点としては
・理事報酬と従業員給与を区別する
・給与規定などルールを整える
・必要な届出を提出する
・給与計算をどのようにするか決める
といったところがあります。
特に初めて給与を支払う場合には手続きなども多く悩まれる団体も多いのが現実です。
今回は、これらのポイントについて解説して行きます。
理事報酬と従業員給与を区別する
NPO法人では理事の中に従業員が含まれることも珍しくありません。
この場合は、理事兼従業員への支払いをする場合には理事報酬なのか従業員給与なのかをしっかり区分して、適切な手続きで金額を決定すべきです。
理事報酬は理事会(または社員総会)で決定するものであり、従業員への給与は給与規定などに基づき決定します。
なお、NPO法人は理事への報酬は全理事のうち1/3までしか支給できませんので、このルールに抵触しないよう注意してください。
理事が職員を兼務する場合の注意点などの詳細はこちらの記事にも記載しています。
参考 NPOの理事が従業員と兼務した場合の給与の取り扱い〜定款の設計も重要です〜ソーシャル税理士金子尚弘のページ給与規定などルールを整える
給与を支払う場合には、基本給や手当などを定めた給与規定を作成することが望ましいです。
特に、認定NPO法人の申請を支援額の大きな助成金を受ける際にはガバナンスの確認として提出を求めるれることもあるためです。
給与規定を作成しない場合でも、労働条件を定めた雇用契約書(もしくは労働条件通知書)は必ず作成するようにしましょう。
労働条件を明示することは法律で定められていますので、必ず作成しスタッフに渡すようにしてください。
必要な届出を作成・提出する
初めて従業員を雇用する場合には、税務署や年金事務所などへ届け出が必要となります。
一覧にするとこのようになります。
<税務署に提出するもの>
給与支払事務所等の開設届出書
源泉所得税の納期の特例の承認申請書(任意)
<提出しないが従業員から回収すべきもの>
扶養控除申告書
<年金事務所に提出するもの>
健康保険・厚生年金保険新規適用届
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
<労働基準監督署に提出するもの>
保険関係成立届
<ハローワークに提出するもの>
雇用保険適用事業所設置届
まず、税務署には給与支払事務所設置届を提出する必要があります。
給与を支払うと、給与から源泉所得税などを天引きし、税務署へ納める義務が生じます。そのため、税務署への届け出が必要になります。
源泉所得税は給与支払の翌月に納税することとなりますが、給与から天引きする源泉所得税の納税を半年に1度にすることも可能です。この場合は、源泉所得税の納期の特例の申請書を提出します。
また、そのNPOが主たる勤務先の場合は扶養控除申告書提出してもらうことも必要となります。この提出がなければ源泉徴収の金額が通常よりも高くなってしまいます。
また、厚生年金と健康保険、労災保険、雇用保険の手続きも必要になりますが、それぞれ提出先が異なるので、注意が必要です。
なお、労災保険や雇用保険は役員報酬のみ支給する場合は手続きは不要です。
勤怠管理や給与計算をどのようにするか決める
源泉所得税の計算や社会保険料の計算のミスの原因となりますので、手計算やExcelでの給与計算はお勧めできません。
給与の額に誤りがあると訂正するのが非常に面倒ですし、何よりスタッフからの信頼を失うことにもつながります。
また、勤怠管理も勤怠システムを導入するなどして適切に労働時間を管理できるようにするのが望ましいでしょう。
労務管理ができず残業代の未払いなどが発生してしまうと、従業員とのトラブルの原因にもなりますし、退職後に未払い分の支払いを求められる事例も増えています。
そのため、適切な勤怠管理を行った上で、給与ソフトを導入するか、社労士さんなど給与計算を代行してくれる方に依頼すべきでしょう。
まとめ
事業が軌道に乗るまでは設立メンバーが無報酬で事業に関わっていても、いずれは自身に報酬を支払ったり、スタッフを雇用するタイミングも来るでしょう。
特に初めて雇用する場合には税金や社会保険の手続きを理解しておかないと、税金の納付を忘れたり社会保険の加入漏れが生じてしまう可能性があります。
税金と社会保険では提出先も異なりますし、最初は面倒ですがきちんと手続きをして正しく給与を支払えるようにしておきたいですよね。
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