【イベント】みんなで確定申告を開催します

岸田政権の減税に効果はあるのか〜税理士の目線で解説します〜

こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。

岸田政権が自民党に対して減税を検討するよう指示していると報道されています。

現段階の情報では、所得税3万円と住民税1万円の計4万円の減税になる見通しです。

なお、扶養親族についても減税の対象とするため、配偶者や子供などの扶養親族がいる人は減税額が大きくなります。

ただし、この減税は1年間限定ということのようですし、個人的には意味がないどころか社会全体ではデメリットの方が大きいと考えています。

今回はこの減税策の何が問題なのかについて考えてみたいと思います。

減税案の問題点

まだ検討段階ではありますが、制度を整理すると、

①所得税と住民税の減税(所得制限については不透明)

②所得税と住民税を引き切れない世帯については、一部給付で対応

③所得税が引き切れない低所得世帯では7万円の給付

④住民税が非課税の世帯については7万円の給付

と少なくとも4パターン発生することになります。

図にするとこんな感じですね。

減税と言いながら、給付策とセットになっているのがまたややこしいです。

特に②や③の場合は判定もややこしくなりますし、減税+給付という運用上の手間も大きくなります。

また、減税の場合には手取りに反映されるまでの期間が長くなり、迅速性に欠けるという問題点もあります。(詳細は後述します)

つまり、制度が複雑な上に恩恵を受けるまでの期間が長いというのがこの減税案の問題点だと言えるでしょう。

減税はいつ手取りに反映されるのか

まだ制度の詳細が固まっていないので推測の部分もありますが、手取りへの反映も少し複雑になりそうです。

まず、税金は法律に基づいて課税されることが大原則ですので、法律を改正する必要があります。そうなると最短でも2024年以降の所得税や住民税でなければ減税策を反映することはできません。

過去には法案の成立日よりも前に遡って効力を生じる改正を行ったこともありますが、一般的には望ましいものだとは考えられていません。(過去に遡ってルールを変えるなんて普通に考えてダメですよね)

そのため、スムーズに法案が成立しても2024年以降に効力が生じるような改正になるでしょう。

その前提でお話をすると、住民税の減税枠については、2024年の6月以降の住民税から減税されると思われます。

会社員の場合は毎月の給料から天引きされるため、扶養親族がいない場合の減税額は1ヶ月あたり8,000円程度になります。

続いて所得税ですが、2024年分の所得税が確定するのは最速でも2024年の12月です。

これは年末調整を受けられる会社員の話であり、個人事業主等確定申告をする場合は、2025年の3月にならないと恩恵を受けられません。

また、年末調整や確定申告の結果、減税枠を引き切れなかった場合には別途給付金が支払われるため、給付金の支給は2025年の春以降になる可能性があります。

このように、減税の場合は恩恵を受けるまでの期間は非常に長くなります。

税収増を還元したり物価高に対応するための対策であるならば、適切な案なのかは疑問です。

税金は小手先の選挙対策に使うべきではない

岸田政権としては、この減税を税収増加の還元や物価高対策と言っていますが、選挙のための人気取りと疑われても仕方ないでしょう。

そもそも住民税非課税世帯には高齢者世帯が多いですし、人数も多く投票率も高い高齢者受けする案を出したと思いたくもなります。

税制というのは、小手先の選挙対策で動かすものではなく、その国の考え方を踏まえて中長期的な視点で立案すべきものだと思います。

所得税の減税自体が必ずしも悪いものではなく、恒久的な制度であれば意義もあるでしょう。

しかし、1年限定の減税では効果も薄く、いたずらに社会を振り回すだけで、減税の恩恵よりも社会的コストの方が大きい結果になりかねません。

広く減税の恩恵を与えるのであれば、基礎控除の増額や高所得者に対する基礎控除の復活などがふさわしいでしょう。

物価が上昇しているのであれば、「最低限の生活保障」という意味のある基礎控除を引き上げるのは当然のことです。

また、子育て世帯への支援を進めるのであれば、年少扶養制度の復活も効果があるでしょう。

これならば、子育て世代に対してピンポイントで減税を行うことができます。

今回の減税案については、

・1年の期間限定であること

・減税と給付の組み合わせという複雑な制度であること

などから、問題点の大きい制度だと思います。

まとめ

今回の減税案は効果も限定的ですし、社会的なコストに見合わないのではないでしょうか。

税理士という税金を扱う立場から意見を述べれば、税制の大原則である「公平・中立・簡素」からかけ離れた場当たり的な対策と言わざるを得ません。

個人的には、1年限定の減税のために法改正をするぐらいなら、全員にさっさと給付金を配ればいいんじゃない?と思う訳です。

この方がよっぽどスピード感もありますし、制度もシンプルですよね。

マイナンバーや公金受取口座がしっかり活用されれば給付金を支給するコストも抑えられますし、「国民背番号制度」とか「国に情報が筒抜けになる」とか訳の分からないことを言わずに行政の効率化に協力する方が建設的だと思いますけどね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です