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会費に消費税は掛かるのか〜具体例で検証してみよう〜

こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。

こちらの記事で、会費に関する消費税の取り扱いについてご説明しました。

基本的な考え方はご説明できましたが、それでも判断に迷うものもあると思います。

ここでは、過去の事例を参考にしながら、消費税の具体的な判断について考えていきます。

事例1:モンテディオ山形(サッカークラブ)の場合

サッカークラブのモンテディオ山形を運営する山形県スポーツ振興21世紀協会が徴収していた会費について「課税である」という判断がなされました。(仙台国税不服審判所平成15年9月25日裁決)

この事例について詳しく解説していきます。

会費の内容について

まず、どのような会費を徴収していたのでしょうか。

協会は会員の種別に応じて、次のような特典を用意していました。

・個人会員(会費1万円)

ホームゲーム1試合ごとに1名の招待入場券

・賛助会員(会費5万円)

ホームゲーム1試合ごとに5名までの招待入場券

なお、これらの入場券については全てが使われていた訳ではなく、配布した入場券の17%程度しか利用されていなかったようです。

税務署の指摘と協会の意見

税務署は「会費には対価性がある」として、会費収入全体に対して消費税の申告漏れを指摘しました。

協会は「会費は営役務との間に明白な対価関係がなく資産の譲渡等の対価には当らない」として、寄付に該当するものだと主張しました。

ちなみに、補足的な主張として「使われた招待券分に対してのみ課税されるべきだ」とも主張していました。

こちらは、会費のうち17%がチケット代で、残りは寄付だという主張ですね。

皆さんはどの意見が正しいと思いますか?

確定した判断は?

仙台国税不服審判所は次のように判断しました。

・チケットの特典は金額換算が可能である

・会員になることで特典を受ける権利が得られる

・そのため、特典を目的に会員となっていることは否定できない

という理由から、会費の全額を消費税の課税対象と判断しました。

やはり、サッカーのチケットという換金性もあり、市場に流通しているものを配布したという点が「対価性がある」との判断に繋がったのだと思います。

【参考】国税不服審判所の判断(抜粋)

本件各会員者は、県のスポーツ振興事業の運営への協力並びに金額換算が可能な本件各特典及び金額換算が困難な本件各特典について価値観を見出し、これらのサービス、便益を受ける資格を得ることを目的として社団法人に入会するものと推認される。

したがって、本件各会員は、会員としての資格を取得することにより本件各特典を受けることから、本件会費と本件各特典の間には、明白な対価関係があると認められる。

以上のとおり、本件会費は、事業者が事業として対価を得て行う役務の提供である課税資産の譲渡等の対価と認められ、この場合の役務の提供に係る対価の額は、提供すべき本件各特典の利用率による価額で判断するのではなく、当事者間で授受することとした対価の額とするのが相当である。

事例2:宗教法人が合宿研修を実施した場合

こちらは、年に1度会員を対象として合宿研修を実施していました。

この宗教法人は、会員から徴収した参加費と、旅行会社に支払った実費の差額を寄付として処理をしていました。

しかし、この差額については「対価性がある」と判断され、消費税の課税対象という判断がなされました。(東京国税不服審判所平成16年2月5日裁決)

会費ではなく寄付として争った事例ですが、考え方のヒントになると思いますので、この事例についても解説していきます。

寄付の内容について

この宗教法人は毎年合宿研修を実施しており、参加者から宿泊費として25,500円(2泊3日)を徴収していました。

宗教法人は旅行会社にコーディネートを依頼していましたが、

宿泊費>コーディネート代

となっており、いくらかは宗教法人の手元に残るようになっていました。

そして、この残ったお金を「寄付」として処理をして、消費税の対象外としていました。

税務署の指摘と法人の意見

税務署は

・会員は、宿泊費を支払うことにより研修に参加することができる

・会員に対する役務の提供の対価として宿泊費を受領している

といった理由から「対価性がある」と判断して、消費税の課税対象だとして申告漏れを指摘しました。

(受け取った宿泊費の全額が課税売上で、旅行会社へ支払った金額は課税仕入という処理です)

宗教法人は

・定款に記載された本来の目的を達成するために組織的活動の一環として行われているものである

・宿泊費は宿泊代などを賄うために徴収したもので、明白な対価性はない

・本来であれば、法人の会館で無料で行うが、会場の関係でやむを得ずホテルで行った

・そのため、収入を得る目的のセミナーや研修とは性質が異なる

などとして、消費税は課税されないと主張しました。

確定した判断は?

東京国税不服審判所は

・合宿研修は会員全員を対象に無料で実施するものではなく、宿泊費を支払わなければ参加できない

・参加する会員に対し、ホテルでの飲食、宿泊、ホテルまでの旅行という役務が提供されている

という理由から、合宿研修と宿泊費との間には明白な対価関係があり、消費税の課税対象だと判断しました。

宿泊付きの合宿であり、実費を超える参加費を徴収しているという点がポイントでしょう。

このような形態だったので、宗教法人が主催する有料の合宿という判断になったのだと思います。

まとめ

今回は2つの事例を紹介しましたが、消費税の判断のポイントになる点を整理しておきましょう。

チケットなどのように一般に広く販売されるものや、有料の宿泊や研修などは対価性があると判断されることとなります。

対策としては、

・チケットを配布する会員プランと配布しない会員プランを作り消費税の取り扱いを分ける

・旅費は実費のみを徴収して、総会の会費とは区分する

といったことが考えられるでしょう。

全てを「課税対象」とされないためにも、対価性があるものについては区別して受け取ることも一つの対策ではないでしょうか。

課税にしても課税対象外にしても「なぜこのように判断したのか」を明確にしておくことは最低限考えて置くべきだと思います。

税務署に何か聞かれて「いやー、特に考えずに判断しました」なんて言ったら全力で攻め込まれますから・・・

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