遺贈寄付という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
亡くなった際に公益法人や認定NPOなどの公益性の高い法人へ遺贈(もしくは死因贈与)を行うこと、相続財産を受け取った相続人が公益性の高い法人へ寄付を行うことを言います。
日本ファンドレイジング協会の調査によると40代以上の約2割が遺贈寄付に関心があるとか。(母数や調査方法は確認できなかったので、この数字は調査によって大きく変わる可能性はありそうですが)
とは言え、まだまだ認知度も実施数だと思われる遺贈寄付。少し考えてみたいと思います。
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遺贈、死因贈与って?
遺言がなければ法定相続人で遺産分割をすることになります。逆に言えば、遺言がなければ法定相続人以外は遺産にタッチすることは出来ません。
しかし、「バカ息子よりも世の中の為に使って欲しい」とか、「子どもがいないので、兄弟で分けるならお世話になった学校や施設に」といった声があるのも事実です。
法定相続人以外に遺産を渡せないとなると故人の意思に反することも起きてしまいます。そこで、遺言を書くことで意思通りに遺産を残すことも認められています(遺留分はありますが)。
このように、生前に遺言を書くことで法定相続人以外に遺産を渡すことを遺贈といいます。
遺言は貰い手の意思と関係無く書くことが出来ますので、私が大好きな眞鍋かをりさんに遺贈することも出来ます。
お酒が飲めて旅好きで才女ってもう…(*´Д`*)でももう人妻(´・ω・`)でも、イエモンも好き(*´Д`*)
ただし、こんなことをされても眞鍋かをりは困るでしょう。
というか気持ち悪いでしょう、見ず知らずの男から遺産を差し上げますと言われても。
ですので、遺言で遺贈しますと書かれていても拒否できます。
故人の遺志が実らない場合もあるですね(´・д・`)
死因贈与は生前に「私が死んだらこの財産を贈与するからな」と約束をすることです。
遺贈と違う部分は、細かい所を置いておけば生きているうちに話をまとめておくかどうか、です。
法定相続人以外が遺贈や死因贈与を受けた場合は、相続人と同じく一定の相続税を納める必要があります。
遺贈、死因贈与は相手が法人でも可能
遺贈や死因贈与は個人だけでなく法人に行うことも可能です。
その場合、相続税の対象からは外れ、相続人が受け取る財産をベースに相続税を計算します。
え?相続税がかからないの?と思うかもしれませんが、法人が財産を受け取っても相続税はかかりません。
ただし、法人税は課税されます。(受け取った財産の時価が法人の収入になります)
とは言え、法人税は利益に対して課税されるので、赤字の会社に遺贈をしてしまえば、その赤字の範囲内であれば法人税の課税もありません。
(ただし黒字法人であれば、株主にみなし贈与の問題が生じる可能性があります。これは専門家向けですが…)
この扱いは遺贈・死因贈与だけでなく、生前に寄付した場合でも同じです。
法人税より怖い譲渡所得税
赤字法人へ遺贈したら相続税対策にもなってハッピー!と思うかもしれませんが、不動産を遺贈する場合は注意が必要です。
法人へ何かを無償で譲渡すると、その値上がり益に対して譲渡所得が課税されます。
例えば、1000万円で購入した土地を法人へ遺贈した場合で、遺贈時点の時価が1500万円だとすると、値上がり分の500万円に対して課税されます。
でも死んじゃってるじゃん!と思うかもしれませんが、亡くなった場合でも亡くなる時点までの所得税を納めないといけません。
この場合は準確定申告として相続人が行い、納税することになります。
公益法人や認定NPOへの遺贈、死因贈与の特徴は?
財産を公益法人等に遺贈や寄付を行った場合の特徴は①譲渡所得の非課税、②相続税の非課税、③法人税の非課税があります。
①譲渡所得の非課税
法人に対して無償で譲渡をした場合には値上がり部分に課税される点は説明した通りです。
しかし、その相手が公益法人等(国、認定NPO、社会福祉法人、学校法人など)であり、公益を目的とする事業に使われるなどの要件を満たせば譲渡所得が非課税となります。(国税庁の承認が必要です)
②相続税の非課税
被相続人→法人への遺贈であればそもそも相続税の対象になりませんが、被相続人→相続人→法人の場合は原則として相続税が課税されます。
遺言が無ければ遺贈は出来ませんので、いくら亡くなった方が「財産をNPOに寄付してくれ・・・」と言っていたとしても、遺言が無ければ相続で取得した財産を寄付するという2段階の手続きが必要になります。
しかし、これでは相続で取得した時点で相続税が課税されてしまうので、寄付するのにも負担が発生してしまいます。
寄付者に負担が生じるのは良くないということで、一旦相続で取得した財産であっても寄付先が公益法人等であれば相続税を非課税としています。
③法人税の非課税
法人が遺贈や寄付により財産を取得した場合にはその時価が収入になると説明しましたが、公益法人の場合は収益事業にしか法人税が課税されません。
そのため、収益事業を行なっていない公益法人や、収益事業を行なっていても遺贈や寄付された財産を公益事業のために使うのであれば法人税が非課税となります。
まとめ
このように、公益法人へ遺贈や寄付を行う場合には税負担が生じないような配慮がされています。
NPO業界では遺贈寄付の研修なども増えているようで、注目度は上がって来ていることは間違いないでしょう。
とは言え、全く関係のない法人に遺贈や寄付を行うことは考えにくいですし、受け入れる法人としては地域の方との関係作りが大切になるはずです。
時間を掛けながら関係作りを進めて行き、その先に遺贈寄付があると考えるべきでしょう。
寄付する側がどんな意味を感じるかが大切ですから。
少額の寄付もそうですが、金額が大きくなれば遺贈寄付ともなればなおさらですよね。
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