ここ1ヶ月で法人設立に絡む相談がいくつかありました。
会社設立自体も面倒ですが、それ以外にも個人で続けて来た事業を法人化しようとした時に考えなくてはいけないことが色々あります。
その一つが消費税。
多くの会社が、法人税よりも消費税の税額の方が大きいのではないでしょうか?
これで10%に引き上げられれば更に影響が大きくなります。
個人事業を法人化する場合の消費税の考え方について整理してみたいと思います。
*資本金を1000万円以上で設立すると取り扱いが変わりますので、資本金1000万円未満や資本金がないNPOなどの場合を想定しています。
消費税を納めなくてはいけない場合
まず、消費税を納めなくてはいけない場合と、そうでない場合について整理してみましょう。
基本的には、2年前の売上が1000万円を超える場合には、その年は消費税を納める必要があります。(売上だけでなく、雑収入などで経理した収入も含めます)
ただ、医療機関の保険診療や身体障害者用の車椅子などの備品、預金の利息など非課税になっているものもありますので、売上とは一致しませんが、多くの場合は売上と雑収入を足した金額で判断すれば良いでしょう。
ただし、特例として決算期のスタートから半年間の売上と人件費がいずれも1000万円を超える場合は、その翌年は消費税を納める必要があります。
図にするとこんな感じになります。
①1期目 | ②2期目 | 3期目の消費税 |
売上>1000万円 | 検討不要 | 必要 |
売上<1000万円 | 売 上>1000万円 人件費>1000万円 | 必要 |
売上<1000万円 | 売 上>1000万円 人件費≦1000万円 | 不要 |
売上<1000万円 | 売 上≦1000万円 人件費>1000万円 | 不要 |
売上<1000万円 | 売 上>1000万円 人件費≦1000万円 | 不要 |
*1期目の前半で売上が1000万円超かつ人件費1000万円超の場合は2期目から消費税の納税が必要になります。
法人化するタイミングはいつが良い?
個人事業を止めるタイミング
個人事業の場合は1月〜12月で集計することになりますが、法人に事業を移すタイミングによって、個人の消費税の納税額が変わる場合があります。
ざっくり言ってしまうと、
①今年、消費税の納税が必要な場合→なるべく早く移行
②今年、消費税の納税が不要な場合→なるべく遅く移行
ということになります。
むしろ、売上が1000万円以下の場合は特別な事情が無ければ法人化するメリットは薄いでしょう。
法人の決算期の設定について
売上の規模によって決算期の設定を変える必要があるかもしれません。
1期目の売上が1000万円を超える場合、3期目は必ず消費税の納税が必要になります、
そのため、1期目の売上を1000万円以下に抑えるような決算期の設定を検討しても良いでしょう。
決算期は1年間でなければいけない、という決まりはありません。
例えば、売上が毎月100万円の会社の場合、1期目を1年間に設定すると、売上が1200万円となり、3期目の消費税の納税が必要になります。
一方、1期目を10ヶ月に設定すると、売上は1000万円となり、3期目の消費税の納税は必要なくなります。(2期目の前半の売上or人件費が1000万円以下の場合)
売上に季節変動がある場合は、その辺りも考慮しながら設定する必要があるでしょう。
なお、法人の決算期をいつにするかは、消費税以外の要素も検討する必要がありますので、実際に検討する際には専門家にご相談されることをお勧めします。
まとめ
以前は2期前の売上が1000万円を超えるかで判断すれば良かったのですが、改正を繰り返してこんなに複雑な制度になってしまいました。
今回は小規模の事業者が法人化した場合の例を取り上げていますので、半年間の売上も人件費も1000万円を超えることが確実な場合はまた違った対策が必要になります。
また、小規模事業者の場合でも初年度から大きな設備投資を行う場合はあえて消費税の納税が必要な法人になるという届け出をすることで、設備投資分の消費税が還付してもらうことも可能です。
大枠の制度は知っておいて、実際に法人化を検討する場合には専門家に相談するというスタンスが良いのではないかと思います。
[…] […]