こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
総務省がふるさと納税の対象から静岡県小山町、大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4市町村を2019年6月から除外されることが決まりました。
特に泉佐野市はamazonギフト券の還元など、派手な広告で注目を集めていましたが、6月からはどうするんでしょうか。
ここでは、2019年6月からのふるさと納税制度について整理をした上で
・除外された自治体へ寄付した場合の取り扱い
・泉佐野市の千代松市長の「後出しじゃんけん」発言に
ついて考えてみたいと思います。
ふるさと納税の改正と、その経緯
改正の概要
今回の改正にあたっては、各自治体のふるさと納税について
①返礼品は地場産品であること
②返礼品の調達額は寄付額の3割以下
③返礼品を強調した宣伝広告をしない
といった要件が求められていました。
そのため、2019年6月からは上記の要件に従った運用がされることとなります。
返戻率が高い返戻品はなくなるため、2018年までと比べると、返戻品としての魅力は落ちるかもしれません。
改正の経緯
これは、一言でいえば「ふるさと納税の通販化」でしょう。
ふるさと納税の導入時の議論では「自信の出身地に納税をする」ということが想定されていました。
その理由は「子どもの時には教育コストなどで行政負担が発生するのに、成人して納税者になる頃には都会に引っ越している」というものです。
この辺りは、ふるさと納税の仕組みを解説した記事をご参考にして頂ければ。
参考 ふるさと納税の仕組みと歴史について〜問題点も紹介します〜ソーシャル税理士金子尚弘のページそこで、総務省は趣旨から逸脱した自治体をふるさと納税制度から除外し、税制優遇を制限する方向性を示しました。
平成30年(2018年)9月1日時点では246自治体が3割超の返戻品を送っており、特に規模の大きい(寄付額10億円以上)12自治体の名前が公表されました。
出所:ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況 についての調査結果(総務省)
ここで多くの自治体は方針を改めて国に従った訳ですが、最後の最後まで抵抗を続けた泉佐野市を筆頭に4団体はふるさと納税制度から除外される結果となってしまいました。
除外された団体へ寄付した場合の取り扱いは?
除外された4団体に寄付しても2019年6月1日以降は税制優遇を受けられない
というのは少し不正確な説明です。
ふるさと納税制度から除外されたことに注目が集まっていますが、寄附金控除の制度から外れる訳ではありません。
寄附金控除とは、国や地方公共団体へ寄付した場合、「寄附額ー2,000円」の所得控除が受けられる制度です。
泉佐野市などもふるさと納税の制度から除外されただけであって、地方公共団体であることに変わりはありません。
そのため、最高税率の納税者であれば55%(所得税45%+住民税10%)の控除は受けられる訳です。
1円も控除が受けられないというのは間違いなので、ご注意ください!
金子
なお、寄附金控除の制度の細かな解説については、こちらの記事をご覧ください。
参考 NPOなどに寄付をした場合の税金について〜個人・所得税の寄附金控除〜ソーシャル税理士金子尚弘のページ国はそもそも「後出しじゃんけん」をする
今回の改正でふるさと納税制度から除外されることとなった泉佐野市の千代松市長は
「後付け、後出しじゃんけんのように、規制・通知でもって、それを押さえつけようとしてきたのが総務省であり、そのやり方が間違っている」
と発言しており、かなりお怒りのよう。
ただ、良いか悪いかは別としても、
税制なんて後出しじゃんけんのオンパレード
という事実は知っておいて頂きたいです。
最近の例ではいわゆる「節税保険」の税務処理についての改正が話題となりました。
参考 生命保険などの税務上の取り扱いが変更されます〜国税庁のパブリックコメントから〜ソーシャル税理士金子尚弘のページそのため、法の網をくぐるようなキワドイ節税は「後出しじゃんけん」で規制される可能性は十分にあります。
先日の記事でも説明しましたが、専門家であれば将来のリスクについても考えておくべきでしょう。
参考 無料セミナーで騙されないために持ちたい目線〜本当の専門家はコレを伝える〜ソーシャル税理士金子尚弘のページメリットだけの説明を受けて、いざ策を実行しようとした時には制度が変わっていた、なんてことになればシャレになりません。
もちろん、「将来規制される可能性が高いですよ」と伝えた上でクライアントが決断したのであれば、否定するものではありませんが。
まとめ
ふるさと納税制度の本来の趣旨を考えると、返戻品に一定の制限を設けることは当然のことだと思います。
むしろ、返戻品競争が加熱するまで手を打たずに後手に回ったからこそ、ここまでの混乱を巻き起こしたのではないかとも。
税制を考える時には、現状の取り扱いを知っておくのは当然ですが、制度の成り立ちを知っておくことで、今後の制度変更などを想定することに役立つこともあります。
「お得な制度だから使わなきゃ」という意見もごもっともだと思いますが、これを機会に「そもそもどんな制度なのか」ということに関心を持つ人が増えればな、と考えたりしています。
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