こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
消費税の軽減税率が導入されると、8%のものと10%のものに区分して計算をしなくてはいけません。
しかし、線引きも難しい部分がありますし、何よりも面倒くさい!
そんな人のために「税額計算の特例」という制度があります。
これは売上と仕入の税額計算にそれぞれ定められているので、該当する人は検討してみても良いかもしれません。
(消費税の計算の仕組みについてはこちら)
参考 【消費税改正】消費税がいよいよ10%に〜影響と対策まとめ1〜ソーシャル税理士金子尚弘のページContents
売上の計算に関する特例
売上に関する消費税の計算特例は、2019年10月1日から2023年9月30日までの期間で適用が可能で、中小事業者のみに認められます。
なお、中小事業者とは基準期間(2期前の決算)の課税売上高が5000万円以下の事業者です。
特例の計算方法は3通りあり、①仕入の割合で計算する方法、②営業日を10日ピックアップして計算する方法、③軽減税率の売上を50%として計算する方法、があります。
仕入の割合で計算する方法
この方法は、卸売業と小売業のみが使える方法です。
卸売や小売は仕入れたものをそのまま販売するので、「食料品を仕入れれば、そのまま食料品として販売するでしょう」ということです、
まず、仕入のうち軽減税率が適用されている仕入の割合(=小売等軽減仕入割合)を計算します。
*「全ての」と記載していますが、卸売と小売に関する仕入れの全てという意味です。他の業種を行なっている場合は注意してください。
全ての売上高に小売等軽減仕入割合を掛けたものを軽減税率分の売上高とみなします。
この軽減税率の売上高に税率を掛けて、軽減税率分の消費税額を計算します。
そして、残りは10%分の売上として消費税を計算します。
【注意】簡易課税を選択している事業者はこの方法が使えません。
仕入をちゃんと計算しているんだから簡易課税はダメよ、ということでしょうか。
営業日を10日ピックアップして計算する方法
この方法は、業種に関係なく使えます。
連続する通常の営業日を10日ピックアップして、その期間の割合を年間分の消費税計算に使うことになります。
まず、10日間の売上のうち、軽減税率の売上割合(=軽減売上割合)を計算します。
次に、全ての売上高に軽減売上割合を掛けたものを、軽減税率分の売上高とみなします。
ここからは①の方法と同じで、軽減税率の消費税額を計算して、10%分の消費税計算まで行います。
ポイント
ピックアップする10日間は、通常の営業日である必要があります。
例えば、食料品の特売日など、通常の営業日と売上比率が変わるような日を含めることはできません。
軽減税率の売上を50%として計算する方法
上記の二つの方法でも計算が難しい!という事業者には、「売上の半分が軽減税率だとして計算しても良い」という特例があります。
何とも雑な感じですが、主に軽減税率対象品目を販売する中小事業者が適用対象になります。
「主に」という定義がハッキリしませんが、スーパーなどで売上の大部分が軽減税率の対象という事業者が対象ではないかと思います。
コンビニも、食料品以外も扱っていますが、食料品で50%を超えるでしょうから、恐らく認められるのではないかと思います。
一方で、メインは店内の飲食で少しだけ持ち帰りの売上がある、というような場合は使えないでしょう。
その他の注意点
①の営業日を10日間ピックアップする方法は、②の仕入の割合で計算する方法を適用する事業者「以外」に認めれる方法です。
例えば、複数の業種を営んでいる場合に、小売の売上は①を適用して、その他の売上は②を適用する、ということは出来ません。
もちろん、③の軽減税率の売上を50%とする方法は「そもそも細かく計算出来ないし。」という事業者向けですので、①や②と併用出来ないのは言うまでもありません。
仕入の計算に関する特例
仕入に関する消費税についても、特例が設けられています。
この特例が使えるのは、2019年10月1日から2020年9月30日を含む課税期間の末日までとなっています。
例えば、3月決算の場合は2020年3月期と2021年3月期にこの特例が選択可能です。
また、個人の場合は2019年分と2020年分の確定申告が対象となります。
簡易課税制度
簡易課税制度は以前から存在する制度ですので、ここでの説明は省略します。
ただし、この特例期間中は簡易課税を適用する課税期間(=年度)の間に簡易課税制度選択届出書を提出することが可能です。
通常であれば、簡易課税を選択する場合は年度が始まる前に届け出をしなければいけませんでしたが、提出に関して特例ができた形です。
(簡易課税についてはこちらの記事を参考にしてください)
参考 消費税の簡易課税制度について〜有利不利のシミュレーションや、注意点を解説します〜ソーシャル税理士金子尚弘のページ売上の割合で計算する方法
簡易課税を除けば仕入税額の計算の特例はこれだけです。
なお、この方法は卸売業と小売業に限られますので、他の業種であれば簡易課税を使うか、原則通りの計算しか選択できません。
要領は仕入の割合で売上の消費税額を計算する方法と同じです。
まず、売上のうち軽減税率が適用されている売上の割合(=小売等軽減売上割合)を計算します。
*「全ての」と記載していますが、卸売と小売に関する仕入れの全てという意味です。他の業種を行なっている場合は注意してください。
*この小売等軽減売上割合ですが、売上の消費税の特例で使用する「軽減売上割合」(10日間の売上を集計したもの)を使用することも可能です。
全ての仕入高に小売等軽減売上割合を掛けたものを軽減税率の仕入高とみなします。
この軽減税率の仕入高に税率を掛けて、軽減税率分の消費税額を計算します。
そして、残りは10%分の仕入として消費税を計算します。
なお、複数の業種を行なっている場合、小売に関する消費税は「売上割合で計算する方法」を使い、その他の業種は「簡易課税制度」を使うということは出来ません。
簡易課税制度を選択すると、全ての業種で一律適用になるので、注意しておきましょう。
まとめ
簡易課税制度を除いては、売上・仕入の特例ともに届け出などは必要ありません。
そのため、実質的には有利・不利を検討してもっとも税額が少なくなる方法を検討することになるかもしれません。
また、売上の特例と仕入の特例では対象となる期間が異なるので、その点も注意してください。
今回の特例制度はかなり面倒な制度になっている、というのが正直な感想です。
また、10日の売上高を集計する方法でも「通常の営業日」の定義は曖昧ですし、50%を軽減税率とする方法でも「主に卸売・小売」というだけで具体的な割合などは示されていません。
後々「これは通常の営業日じゃないでしょう」と税務署と揉めるリスクがあるぐらいなら、あれこれ考えずに原則的な計算か簡易課税の二択で検討するのが良いのではないか、と思っています。
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