こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
参議院議員選挙が近付いて来ましたが、消費税の増税についても各党が主張を展開しています。
与党は2019年10月の引き上げを主張していますが、野党は反対と言っても詳しく見ると主張が異なっています。
税理士として消費税については重要なポイントですので、投票の参考になればと思い、各党の主張をまとめてみました。
Contents
各党の主張(ポイント部分のまとめ)
消費税に関する主張のみをピックアップして、各党のポイントをまとめてみました。
時間のない方はこの章だけ読んで頂いてもおおよその内容はつかめると思います。
各党の
①増税の賛否、②軽減税率について、③代替案や経済対策などの主張
を一覧にすると次のようになります。
現政権は当然ながら賛成、他の党については「凍結」、「引き上げ時期が今ではない」、「中止」、「廃止」など主張は様々です。
なお、共産・社民・れいわの「軽減税率」についてコメントを入れていないのは、そもそも増税or消費税に反対なので、軽減税率も当然無しという理由です。
立憲民主党・維新の会については迷いましたが、「凍結」なので「解凍」があれば軽減税率は議論になると思われるため、あえて「記載なし」としています。
各党の主張(マニフェストより)
ここでは、各党が参院選でのマニフェストでどのように述べているか、基本的には掲載されている文言のままご紹介したいと思います。
枠内で囲っている部分は私の補足コメントです。
自民党
自民党の「令和元年参院選選挙公約」の記載事項です。
全世代型社会保障の構築や財政健全化に向け、本年10月に消費税率を10%に引き上げます。軽減税率制度実施にあたっては、混乱が生じないよう万全の準備を進めます。
消費税引き上げに際し、経済への影響を乗り越えるため、キャッシュレス化推進に向けたポイント還元の実施や、低所得者・子育て世帯対象のプレミアム付商品券の発行、住宅や自動車購入への予算・税制上の支援など、十二分な対策を講じていきます。
消費税率の引上げに伴う混乱が生じることのないよう、消費税率引上げに合わせて行うポイント還元事業、軽減税率に対応したレジ・システムへの補助、周知広報や相談対応、消費税の転嫁状況の監視・取締りなど万全の支援を行います。
現政権ですから、現行で発表されている通り、軽減税率の実施やポイント還元・プレミアム商品券の発行、住宅や自動車税制での対策など発表済みのことが書かれています。
公明党
公明党の「参院選2019マニフェスト」の記載事項です。
10月からの消費税率10%への引き上げで、国民に負担をお願いする今こそ、国会議員自らが、痛みを伴う「身を切る改革」を断行し、その覚悟を示すべきです。公明党は国会議員歳費を10%削減します。
10%引き上げは既定路線ということでしょうか。特に詳しく触れることなく、歳費削減について述べられていました。
ちなみに、公明党のHPには党の実績として
「消費税10%引き上げと同時の導入が決定している軽減税率。その導入決定も公明党が主導しました。家計への負担を軽減するためです。
また、政府・与党内には軽減税率の対象品目を生鮮食品に限るべきとの主張もあったのに対し、公明党は加工食品も含めることを強く求め、実現。そこにも、庶民の暮らしを守る配慮が光りました。」
と書かれています。軽減税率を主導したことをアピールしたいようです。
立憲民主党
立憲民主党の「立憲ビジョン2019」の記載事項です。
消費税率10%への引き上げは凍結します。金融所得課税や法人税などを見直し、税の累進性を強化して公平な税制へ転換します。
消費税の増税は「凍結」として、税制全体を見直すことに言及しています。
マニフェストでは具体的に言及されていませんが、税制については「金融所得課税」は分離課税の見直し、「法人税」については租税特別措置法などの見直しが想定されると考えられます。
国民民主党
国民民主党の「新しい答え2019」の記載事項です。
アベノミクスの6年間は、可処分所得の低下で消費も低迷し、経済が上向かない時代でした。
約束した議員定数削減も果たされていません。高所得者が得をする軽減税率や、一部の人だけが得をするポイント還元を伴う、今回の消費税引き上げには反対します。
『家計支援こそ成長力』。社会保障財源の確保は必要ですが、消費拡大による景気回復を十分に果たさなければ、消費税引き上げを行うべきではありません。
引き上げの前に、先行して子育て支援拡充を行うため、「子ども国債」を発行します。
議員定数の削減など「身を切る改革」が行われていないこと、軽減税率やポイント還元など恩恵が不平等になる制度について指摘して、「今回の消費税引き上げに反対」という立場です。
また、子ども国債の発行(子育て支援のために使途を限定した国債)も打ち出しています。
日本維新の会
日本維新の会「第25回参議院議員通常選挙日本維新の会マニフェスト-詳細版-」の記載事項です。
消費増税凍結。
「簡素、公平、活力の税制」 ・租税特別措置の廃止 ・マイナンバー推進による給付付税額控除。
消費税については「凍結」した上で、税制の見直しをして財源を確保するという主張です。
維新の会の特徴的な主張は「給付付税額控除」です。
税額控除は低所得者などそもそもの税額が少なければ控除の恩恵をフルで受けられない場合もあります。
例えば、納税額が5万円の人に対して10万円の税額控除があるとします。
現行制度では納税額が0円になるだけですが、給付付税額控除の場合は引ききれなかった5万円が還付されることになります。
日本共産党
共産党は「2019年参議院選挙公約と政策」で「消費税10%への増税を中止する」という見出しで次のように述べています。
10月からの消費税増税に対して、生活や商売への不安が日々高まっています。「こんな経済情勢で増税を強行していいのか」という声は、消費税増税に賛成する人たちの中からも上がるようになっています。
ちなみに、原文を載せるとかなりの量になってしまうので、詳しい主張については要約してご紹介します。
・“景気悪化の中での大増税”という無謀な道
景気後退局面での増税は深刻な消費不況を招く。
・“世界の流れ”も無視する愚かな道
IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)なども世界経済の減速や失速を警告している中での増税の問題を指摘しています。
このように主張した上で「“今からでも間に合う”――国民の審判で中止させよう」と消費税増税の「中止」を提言しています。
社会民主党
社民党の「2019年 参議院選挙 選挙公約」」の記載事項です。
格差が拡大する中、低所得者に負担が大きい消費税の増税に依存する「不公平税制」から転換し、税制における「応能負担」原則・「所得再分配」機能を取り戻します。消費税の税率10%への増税に反対し、中止に追い込みます。
消費税の逆進性を指摘した上で、税制の見直しを求めています。
その上で消費税については「増税の中止」を主張しています。
ちなみに、「応能負担原則」は税金を負担できる人(お金持ち)に多くの税金を負担してもらうこと、「所得再分配機能」はお金持ちが負担した税金を所得が少ない層に分配して社会を支えることです。
れいわ新撰組
正式な政党ではありませんが、ご紹介します。
れいわ新撰組の「政権とったらすぐやります・今、日本に必要な緊急政策」の記載事項です。
消費税は廃止、物価の強制的な引上げ、消費税をゼロに。
初年度、物価が5%以上下がり、実質賃金は上昇、景気回復へ。
参議院調査情報担当室の試算では、消費税ゼロにした6年後には、1人あたり賃金が44万円アップします。
端的に述べられていますが、消費税の増税は物価上昇の要因になるため、物価上昇を理由に反対を唱えています。
物価上昇率を訴える自民党とは真逆の主張ということになります。
物価が下がれば相対的に賃金の価値が上がる(同じお給料でも物価が下がれた沢山の物を買うことができます)ので、
「物価を下げて賃金の価値を上げよう!そのためには消費税廃止だ!」
という主張ということになります。
まとめ〜議論は消費税だけではないけれど〜
今回、この記事を書くにあたり、各党のマニフェストを一通り目を通しました。
政治スタンスは人それぞれですし、この記事に特定の政党への投票を呼びかける趣旨はありません。
ただ、消費税増税一つとっても各党の主張は微妙に異なりますし、マニフェストでの熱量も違います。(共産党は長すぎるので原文転載を諦めました)
この記事も「まとめ」と言えばそうなんですが、「主張の要点だけをピックアップしたまとめ記事では見えないものもある」ということはお伝えしたいと思います。
それぞれ関心を持つ分野は異なると思いますが、関心のある分野だけでも各党のマニフェストを見比べてみることをお勧めします。
関心が強い分野であれば、書かれていることも理解しやすいでしょうし、「言葉の裏」みたいな部分も見えるかもしれません。
一部の分野のみを読み比べるのであれば、そこまで時間は掛かりませんし、パソコンかスマホがあれば主要政党のマニフェストはチェックできますよ。
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