こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
2021年(令和3年)4月1日から消費税の総額表示(税込金額の表記)が義務化されることとなります。
正確に言えば、本来は総額表示の義務があるのですが、消費税率が8%,10%と段階的に引き上げられたことなどから、一時的に税抜表示のみでもOKとされていたんです。
2013年(平成25年)から税抜表示も認めれていたので、今となっては「これが当たり前」という感覚かもしれませんが・・・
今回は総額表示の義務化の対象となるのは誰か、どのように表示すれば良いかなどを解説します。
Contents
総額表示の義務化の対象は?〜BtoBは基本的に対象外〜
総額表示義務化の対象となる場合
総額表示ですが、全ての場合に求められる訳ではありません。
対象となるのは「不特定多数の者に対して事前に価格を表示する場合」です。
小売店や飲食店など、一般消費者に向けて販売している事業者の多くが対象となります。
これは、実店舗を持たないオンラインショップも対象になるので、注意してください。
また、総額表示の対象となるは店頭の商品の値札やメニューだけではありません。
・新聞や雑誌の広告
・ネットでの広告
・商品パッケージに印字された価格
・看板などに価格を表示する場合
など、価格を表示する場合は幅広く対象となります。
【飲食店でも対象外となる場合】
例えば、メニューを出していないお寿司屋さんは「事前に価格を表示する」という条件から外れるので、総額表示の対象外です。
また、メニューがあっても「時価」とだけ書くような場合も対象外です。
総額表示義務化の対象とならない場合
不特定多数の一般消費者に向けて販売していなければ対象とはならないので
・特定の取引先にだけ納品している製造業
・一般販売を行わない卸売業者
などは対象となりません。
また、一般消費者向けに販売している事業者であっても「見積書」や「契約書」などは総額表示の対象外です。
見積書や契約書は「不特定多数に事前に価格を表示する」という条件に当てはまらないからですね。
そのため、
・工務店がリフォーム代金の見積もりをする場合
・自動車店が顧客に見積書を作成する場合
などは総額表示の対象外となります。
(当然、税抜金額を表示するのであれば、誤解のないように説明する必要はありますが)
具体的な表示方法について
基本は税込価格が分かればOK
総額表示の義務化に伴って、どのように価格表示をすれば良いのでしょうか。
例えば税抜10,000円で税込11,000円の場合であれば次のようになります。
・11,000 円
・11,000 円(税込)
・11,000 円(税抜価格 10,000 円)
・11,000 円(うち消費税額等 1,000 円)
・11,000 円(税抜価格 10,000 円、消費税額等 1,000 円)
・11,000 円(税抜価格 10,000 円、消費税率 10%)
・10,000 円(税込価格 11,000 円)
要するに最終的な税込の販売価格が表示されていれば問題ないということで、税抜金額も同時に表示することはOKです。
ただし、
・極端に税込金額が小さい
・税込金額だけ文字の色が薄い
・税込金額だけ端っこに書かれている
といったような税抜金額が販売価格だと誤解されるような表示方法はNGです。
そんなズルいことをしてもお客さんは良い印象を持ちませんし、長い目で考えればお店としても損だとは思いますが。
店内飲食とテイクアウトの両方ある場合
今や飲食店でもテイクアウト対応は当たり前になっていますよね。
しかし、面倒なのは店内飲食とテイクアウトで税率が異なるということ。
ご存知の通り、店内は10%、テイクアウトは8%です。
そのため、同じメニューでも店内飲食とテイクアウトで税込価格が変わることになってしまいます。
このように、店内飲食とテイクアウトの両方を扱うお店の場合は
①両方の税込価格を表示する
②いずれかの税込価格だけを表示する
のどちらかを選ぶことができます。
具体的な対応ですが、①の場合は
・一つのメニューにそれぞれの金額を表示する
・店内飲食とテイクアウトで別のメニュー表を用意する
といった方法が考えられます。
②の場合ですが、売上の多い方の価格を表示するのが良心的だと思います。
例えば、ほとんどの売上がテイクアウトで、一部のお客さんがお店の横のベンチで店内飲食するような場合を考えてみましょう。
この場合は、テイクアウトの税込金額のみ表示して「店内飲食は10%です」と注意書きをしておけば大丈夫です。
免税事業者は総額表示の義務化の対象か?
2年前の売上が1000万円以下であれば、消費税を納める必要はありません。(免税事業者と言っています)
そのため、「預かっている消費税も無い」という状態になるので、税抜でも税込でもなく「表示した価格=支払金額」ということになります。
ただし、現実的には免税事業者であっても税抜表示をしているお店もありますし、このようなお店は表示方法を変更する必要があります。
消費者からしたらそのお店が免税事業者なのかどうかは分かりませんので、総額表示の義務化に従って税込金額を表示するのがベストの対応だと思います。
まとめ
店舗でビジネスをしている方はもちろん、オンラインショップを運営している方も総額表示の対象となるため、4月以降は「税抜金額しか表示していなかった」とならないように対応が必要です。
消費者も「税込表示が当たり前」という認識になるでしょうし、税抜表示しかしていなければ「騙された!」と感じるお客さんもいるはずです。
これでお店のイメージが悪くなれば何も良いことはありませんので、しっかり対応しておくべきだと思います。
取り扱う商品数が多いと切り替え作業も大変だと思いますので、少しずつでも対応を進めておくべきでしょう。
そのような場合は一時的に色々な価格表示が混在してしまう可能性もありますし、お客さんには「移行期間で表示が統一されていない可能性があります」など注意を促すのが良いかもしれません。
対象となる事業者は総額表示をすることは当然ですが、準備期間も含めて「お客さんに誤解を与えない」ということが大切になると思います。
対象となる方は大変だと思いますが、しっかり対応して行きましょう。
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食料品などを扱う免税事業者の方で、消費税増税の際に価格を引き上げていない方もいると思います。
もちろん単純に引き上げれば客離れなどの可能性もありますが、これを機会に価格改定を検討しても良いかもしれません。
参考 【消費税増税】免税事業者は軽減税率でも価格を据え置くと損をします!〜価格改定が必要な理由とは〜ソーシャル税理士金子尚弘のページ
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