こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
白血病の新薬として保険適用が認められることとなったキムリア。
薬価が3350万円ということで注目を集めていますが、これをどう見るか。
「高い」と言われればその通りかもしれませんが、一回の投与の金額だけで物事を論じて良いのでしょうか。
数字を扱う者として少し考えてみたいと思います。
キムリアは本当に財政を圧迫させるのか
キムリアの保険適用の報道を見ていると、高額な薬価で医療費の財政を圧迫するという論調で書かれている記事もありました。
でも、これって本当でしょうか?
平成29年度の日本の医療費は42.2兆円となっています。(厚生労働省「医療費の動向」)
投与が見込まれる患者数は216人とのことで、3350万円×216人=約72億円の負担となるとのこと。
3350万円や72億円という数字だけ見れば大きな金額に思えますが、医療費全体に占める割合はわずか0.017%です。
果たして「財政を圧迫する」と報道するのは正しいでしょうか?
単価は安いものの処方数が多いいわゆる「風邪薬」や「点滴」などの方が全体へのインパクトとしては大きいのではないでしょうか。
(医療の専門家ではないので、詳細は検証していませんが・・・)
数字を見る時に注意すべきこと
数字を見る時に考えなければいけないポイントの一つに、「どれだけ全体への影響があるか」ということがあります。
飲食店のメニューで松竹梅があり、一番高いメニューは「松」ですが、売上への貢献度で言えば、圧倒的に「竹」になることが普通です。
いくら単価が高くても、オーダーが少なければ売上全体へ与える影響は少なくなる訳です。
これはコスト面でも同じことが言えます。
会社を経営する上で「無駄なコストはないか」を考えることは非常に大切です。
売上に何の役にも立たない経費を使っていてはまさに無駄遣いですから。
ただ、ここで考えたいのは「全体への影響はどの程度か」というところです。
例えば節電のためにこまめに電気を消す、という対策をするとしましょう。
もちろん無駄な電気を使わないことは大切なんですが、これでいくらの節電になるでしょうか。
事務室や給湯室の電気をこまめに消したところで、全体のコストへの影響は微々たるものでしょう。
それであれば「新電力への切り替え」や「LEDへの取り替え」など、そもそもの電気代や消費電力を抑える取り組みをした方が効果は高いはずです。
また、コスト全体の割合で言えば「人件費」が比較的大きな割合を占める会社も多いと思います。
こちらも、ノー残業デーを設けて残業代を減らすことよりも、製造ラインや事務作業の効率化を進めて一人当たりの生産性を上げれば経営全体への寄与度も高くなるでしょう。
このように、コストを考える時には全体へのインパクトがどの程度かも考えた上で優先順位を決めるべことがセオリーです。
(別に節電に意味はないとか、従業員をこき使えと言っている訳ではありません。念のため。)
まとめ
キムリアの報道では3350万円という薬価に注目が集まっていますが、これで救われる命が増えるのであれば、喜ばしいことなんじゃないかと。
そもそも、一人では負担しきれないリスクを全員で広く浅く負担するのが保険の趣旨なんですから、国民皆保険の日本であれば当然のことでしょう。
それよりも、「負担できるリスク」を安易に保険に頼っている風邪薬の方が問題なんじゃないかとも思う訳です。
今回のキムリアのようにインパクトのある数字や分かりやすい数字で説明されると、その報道を鵜呑みにして論調に同調してしまう人は一定数います。
しかし、正しい判断をするために一歩立ち止まって「全体に対してはどうなのか」という目線で見てみることも非常に重要です。
これは会社の決算にも、家計にも言えることかな、と思います。
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