軽減税率に該当するかの記事は色々と書かれていますが、実際に実務でどうするのかってまだまだ情報が少ないんですよね。
それも教科書的な話ではなく、現場を回す上でどうするのか、という話が。
今回は飲食店、食品小売店「以外」の売上に軽減税率が登場しない業態での実務対応を考えたいと思います。
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食品は扱っていないから関係ないは大間違い
軽減税率関連の解説では「これは軽減税率になるorならない」と言ったようなクイズ的なものも増えてきました。
もちろん、軽減税率に該当するか悩ましいものもありますし、この辺りの理解も必要ではあります。
では、食品販売などを行なっていない業種でもどれだけ経理に影響があるかを考えてみましょう。
本則課税の場合、
・従業員の昼食用に弁当を取っている
・来客や従業員用に茶菓子などを買う
・贈答用にお菓子などを買う
といった場合には軽減税率の対象商品を購入することになります。
売上が全て10%であっても、経費に8%となるものがあればそれを区分して処理しなければいけません。
従来の消費税の場合の処理
例えば、こんなレシートがあったとします。
(クレジットカード払いの前提で話を進めます)
会議をする際のお茶菓子と紙コップを買ったとして、従来であれば全て「会議費」などとして処理すれば良かった訳です。
経理社員は
会議費 486円 / 未払金 486円
という仕訳を入力すれば終わりです。
消費税についても「課税」が自動で選択されるでしょうから、そこまで気にする必要はありません。
freeeなどの会計ソフトの場合は、「金子商店(株)=会議費」というルール付けができていれば自動で経理が進みます。
軽減税率が導入されるとこんなことに
では、軽減税率が導入されるとどうなるでしょうか?
同じものを買ってもレシートは次のように変わります。
仕訳をすると次のような処理になります。
会議費(8%) 378円 / 未払金 378円
会議費(10%)110円 / 未払金 110円
処理をするのに、2倍の手間がかかります。
freeeなどを使っている場合、従来であれば「金子商店(株)=会議費」といううルールになっていれば一瞬で処理が終わる訳ですが、そうは行きません。
Amazonなど購買情報を取得できるデータ連携ならともかく、クレジットカードや振込払いの場合は「日付」、「支払先」、「金額」の情報しか取得できません。
買った物の内訳はレシートを見るしか分からないので、手入力で処理を訂正する必要が発生します。
例えば、「金子商店(株)=会議費(10%)」というルールになっている場合、
・freeeの自動取込
会議費(10%) 488円 / 未払金 488円
・手入力
会議費(8%)378円 / 会議費(10%) 378円
という感じで、クラウド会計のメリットを全く活かせない結果になってしまいます。
2%余計に払うから楽に処理させてくれぇぇぇー!!!!
生産性を上げるためにキャッシュレスを推進する日本政府。
キャッシュレス決済の手数料は3%以上かかる場合がほとんどです(paypayなど一時的に無料にしているものもありますが)。
3%負担しても効率化しろって言ってるのに、軽減税率はたかだか2%しか変わらないの?
もうね、アフォかと、バカかと。
食品は無税とかだったら、まだ頑張るけどさ・・・
ミスを防ぎ、効率的に経理をするには
某「庶民の味方」政党のおかげでこんな制度が出来上がり、庶民である経理社員はヒーヒー言うことになってしまいました。
こんな状況ですが、いかにミスを防ぎ、効率的に経理をするかを考えないといけません。
思い付く方法をいくつか紹介していきます。
小口現金勘定を2つ作る
現金払いのレシートの場合、小口現金勘定を2つに分けてしまうことも手だと思います。
とは言っても、金庫を2つに分ける訳ではなく、あくまでも勘定上の話です。
エクセル等の出納帳を
・軽減税率用のシート
・10%用のシート
に分けて、それぞれに金額などを記入していきます。
freeeなどの口座登録をそれぞれで分けておけば、
・軽減税率口座:仕訳ルールは全て8%
・10%用口座:仕訳ルールは全て10%
という仕訳ルールを設定することでミスや手入力の手間は減らせるのではないかと。
残高チェックは、軽減税率用口座+10%用口座の残高が実際の金庫の残高と一致しているかで確認します。
ただ、前提として1つのレシートに複数の税率を混在させないという社内でルールを作る必要があります。
ネット通販をフル活用する
クレジットカードの場合、取得できるデータは「店舗」までで、何を買ったかという情報は同期されません。
では、通販サイトを目的ごとに使い分けるという手段はどうでしょう?
freeeやマネーフォワードはAmazonなどの通販サイトの購買履歴を取り込むことができます。(freeeの案内はこちら)
商品名などで仕訳ルールを作れば、通販サイトの情報を同期することで、手打ちをしなくても、税率の判断も含めて効率化することが可能となります。
ただ、商品名は無限にあるので、仕訳ルールが増え続ける可能性があるという欠点はあると思います。
補助科目(品目)などを活用する
これはチェックする際の視点ですが、軽減税率が含まれる勘定科目に
・8%
・10%
という補助科目(freeeでは品目やメモタグ)を作ることもミスを防ぐ効果があると思います。
仕訳を確認する際に補助科目がないと、同じ総勘定元帳の中に8%も10%も混在するため、確認の手間が増えてしまいます。
そのため、補助科目ごとに補助元帳を開くことで、「この画面には8%のものしかないはずだ」というチェックの仕方が可能になります。
こうすれば10%になりそうなものが混ざっていないかの間違い探しをすれば良いだけなので、チェックする時に見るべきポイントが少なくなります。
問題点としては、すでに他の補助科目を設定している場合は設定が困難なので全ての場合で使えるかどうか分からないという点です。
まとめ
いくつか効率化する手段をご提案しましたが、それでも面倒なことには変わりありません。
実際に運用しながら「こういう手段もある」という運用ハック的なものが増える可能性はありますが、消費税のチェック項目が増えるという根本的な部分はどうしようもありません。
簡易課税であればそこまで手間は増えませんが、本則課税の場合は避けようがないですので、少しでも効率化できないか準備をしておく必要があると思います。
っていうか、軽減税率やめない?
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