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事業所得と雑所得の違い〜「本業なのに雑所得」はありえない?〜

こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。

最近twitterで「#本業なのに雑所得」というハッシュタグで「本業なのに雑所得で申告していた人にも持続化給付金を」と訴えるツイートが多く見られます。

などなど、政治家の方も発信されています。

でもね・・・私から言わせれば

「本業だったら雑所得で申告してるのがおかしいでしょ!」

ってところです。

もちろん、生活に困っている方の救済は必要ですが、だからと言って税金のルールを無視した人のために持続化給付金の制度を変える必要はないと思ってます。

別に「支援が必要な人を見捨てろ」と言いたい訳ではないのです。念のため。

【補足】

二次補正予算の成立により、結果的には雑所得や給与所得で申告をしていた人も条件を満たせば持続化給付金の対象となりました。

事業所得と雑所得って何が違うの?

ざっくり言えば、

事業所得=本業

雑所得=副業

だと思って頂ければ。

要するに「本業なのに雑所得」というのはおかしいんですが、興味のある方のためにもう少し説明します。

事業所得ってこんなもの

事業所得は「自己の危険と計算において営利を目的とし対価を得て継続的に行う経済活動」と言われています。

とあるフリーランス

ちょっと何言ってるか分からない

そのまま読んでも分かりにくいと思うので

危険=ビジネスをする上でのリスク

計算=事業資金

だと思って頂ければ。

つまり、「自分でリスクを取り、お金を出して、利益を出すために継続的に仕事をする」人は事業所得ってことになります。

当然、私にとっての税理士業は事業所得です。

雑所得ってこんなもの

雑所得って、「お給料や事業所得などに該当しないもの」なんです。

「これが雑所得です」

という説明ではなく

「何にも当てはまらないものが雑所得です」

ってことなんですね。

給与や事業以外にも所得の種類はいろいろありますが、事業所得との線引きを考えれば

「自分の生活を賭けているレベルじゃないもの」

ってところでしょうか。

売れない役者でも事業所得、高額納税者でも雑所得?

例えば、下積みの役者やミュージシャンが「ギャラや印税だけでは食べていけないから」とアルバイトをしていることもあるでしょう。

この人たちの芝居や音楽の位置付けって何でしょうか?

例えばミュージシャンを例に考えてみましょう。

事業所得って「自分でリスクを取り、お金を出して、利益を出すために継続的に仕事をする」でしたよね。

売れるも売れないも実力次第、まさにリスクを取っていますし、楽器も自分のお金で揃えなくてはいけません。

そして当然ながら「これで食べて行くぞ!」と心に決めている訳で、利益を出すために継続的に音楽の仕事をしているはずです。

そのため、「事業所得に該当する」という結論になります。

仮に音楽だけでは生活が厳しく、アルバイトをしていたとしても、です。

一方で、有名企業の社長が講演に呼ばれて講演料を受け取ったとします。

堀江さんとか、前澤さんとか、ゴーンさんとか、上場企業の社長時代は多額の役員報酬を受け取っていたはずです。

彼らの本業は社長であり、その役員報酬は給与所得に該当します。

有名企業の社長ですから、講演に呼ばれれば1回で数十万円とか、百万円単位の講演料になるかもしれません。

駆け出しのミュージシャンに比べたら圧倒的に稼いでいる訳ですが、社長にとっての講演って事業なんでしょうか?

別に社長が講演に呼ばれなくなったとしても生活に困ることはありませんし、年に数回呼ばれる程度では「継続している」とまでは言えないでしょう。

そうなると、講演料の金額が多額であっても、社長にとっては雑所得ということになります。

まとめ

持続化給付金を巡って色々な意見が出ていますが、本来は事業所得と雑所得って選べるものではなく、当てはまる方で申告をするというものです。

(どの程度「本気」で仕事をしているかなど、本人の裁量も多少は入りますが)

なお、事業所得として青色申告すれば、65万円(または10万円)の控除を受けられるなどのメリットもありますが、帳簿を作成して数字を整理する必要があることは言うまでもありません。

もちろん、このような線引きを知らない人はたくさんいますし、税務署に相談して「雑所得ですね」と言われたら従ってしまうのも仕方ないと思います。

こうならないためにも、きちんとした知識を発信して行かなければ、と思う次第です。

関連記事

複数のビジネスを展開する個人事業の方もいると思います。

個人事業主が「副業」した場合について、どう申告すべきか解説した記事です。

参考 個人事業主が副業をする場合の取り扱い〜事業所得か雑所得かで税額が変わります〜ソーシャル税理士金子尚弘のページ

持続化給付金の制度については、こちらの記事で解説しています。

参考 新型コロナ対策の「持続化給付金」とは〜対象者や支給条件など〜ソーシャル税理士金子尚弘のページ

11 Comments

坂本希代子

金子様。
『本業』『副業』じゃないんですよ。
初めて確定申告する時、税務署に相談に行くと、仕事の内容を説明させられます。俳優や演出家、照明や撮影などの技術職は事業所得に分類されているはずです。が、もっと色々な職があって、分類が難しいものは『雑所得』と指示されます。『本業』であってもそう指示されるんです。
あなたのような 専門家の言うことは大正論なのでしょう。私たちにはそんな専門知識はありません。だから税務署の専門家の指示に従いました。
専門家の立場で記事を書くなら、間違いを指摘するだけでなく、解決策まで書いて下さい。

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金子 尚弘

コメントありがとうございます。
線引きが難しいことと、そもそもちゃんとした知識を得る機会が少ないので、雑所得として申告してしまっている人もいると思うんですよね。
そういった方が少しでも減れば良いな、と思っているので、噛み砕いて記事にした次第です。
解決策は個別事情が大きく関わるため、一律の解決策を示すことは困難です。
それこそ誤解を招いてしまう可能性が高いので、個別で税理士さんなどにお聞きになるのが一番だと思います。
各地の税理士会で無料相談会が実施されています。

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林直光

拝読しました。
>本来は事業所得と雑所得って選べるものではなく、当てはまる方で申告をするというものです。
建前はその通りですが現実は違うのです。
私はフリーカメラマンとして開業し、30年以上確定申告をしています。
本業ですから事業所得なので、当初はそのように申告していました。
それがあるとき税務署職員から『写真原稿』は雑所得で申告するようにと指摘され、それに従って変更し、現在まで20年以上経ちます。
他の仕事はしていません。
このため本業なのに雑所得=対象外となっているのです。
同じ状態の仲間がたくさんいます。
コロナ禍のような状況は政府も税務署も想定外の出来事ですから、どちらも悪意があるわけでは無いことは理解しています。
本当に雑所得=副業が認められるのもおかしいですし。
私としては、確定申告書と同時に収支内訳書も提出させれば、雑所得で申告していても本業であることを証明できると思います。
給付金の問い合わせ電話に昨日やっと繋がりましたが、話しても無駄でした。
何とかならないでしょうか。

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金子 尚弘

コメントありがとうございます。
具体的な状況は分かりませんが、文面で判断する限りは税務署員の方の対応は明らかな間違いだと思います。
事業所得の定義に職種などは一切書かれていません。
もちろん、多くの人はそこまでご存知ない訳で、税務署の指導に従ってしまうのも無理はないのですが。
このような誤った指導に疑問を持てるように、お金に関わる情報発信であったり、税理士に相談するという
選択肢を身近に感じて頂けるような取り組みは微力ながら続けて行くつもりです。

持続化給付金に限って言えば、雑所得で申告している限り、現行の運用が変わらなければ受給はできないと考えられます。
開業1年目の方などと同じで、制度の穴だと諦めるしかなく、私なら持続化給付金に頼らずにどう仕事を展開するかを考えると思います。

返信する
林直光

残念な回答でした。
本文では、受給から弾かれて困っているフリーランスが『税金のルールを無視した人』と断定されているので、そうでは無いことを具体的に説明しつつ相談いたしました。
先の坂本希代子さんのコメントも言っていることは同じです。
税務署の指示に従って確定申告を続けてきて、このコロナの持続化給付金制度が運用されるまでは何の問題も起きていません。

税務署の対応の間違いと給付金制度に穴があることは認めていらっしゃるので、フリーランス側に落ち度は無いことになります。
穴(それも大穴です)とは失敗のことですから、設計者は塞がなくてはならないはずです。
それがなぜ穴に落ちた側が「諦めるしかない」という結論になるのか不思議です。

私は2月からいきなり、仕事・売り上げ 90%減、ゼロの月もあります。
そういう事業者が大勢いるために生まれた持続化給付金です。
その名の通り、それを使って仕事を持続すべく、制度や運用の見直しなどを求めて行くつもりです。
これも金子さまの言う、スジの悪い主張でしょうか。
ありがとうございました。

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金子 尚弘

林さまのように税務署の指導に従っただけという方もいるので、「全ての人がルールを無視している」と受け取られたのであれば申し訳ありません。
色々な事情で持続化給付金の対象外となっている方がいることは承知しています。

私としては「どうなんだろう」という思いがあるので積極的には紹介していませんが、受給することだけを考えれば、事業所得として修正申告をして受給されている方もいらっしゃるとは聞いています。
(これでは、林さまの「制度や運用の見直しなどを求めて行く」という目的は果たされませんが・・・)

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林直光

修正申告のことは検討し、税務署に相談済みです。
ただ修正申告を利用して詐欺を行う連中がいるため、持続化給付金の方で修正申告は受け付けを中断したという情報があります。
修正して却下されると最悪なので、これは様子見です。

税務署がフリー全般に雑所得での申告を指導してきたことが認識されたためか、経産相が受給に漏れるフリーランスの救済策を検討しているようです。
しかし未だに発表されません。
運用の見直しではなく新制度でというのが気になりますが、とりあえずはその発表を待ってみます。

重ねてのご対応をありがとうございました。

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こやまえいこ

金子さま。こんにちは!

個人事業主3年生です。最近見かける
#本業なのに雑所得と#名ばかり給与という不思議言葉に関心を持っているので金子さまの記事を拝見して嬉しくなりました。

私自身、#名ばかり給与時代があって 何年か源泉徴収票を見てネットで確定申告書類を作って印刷郵送をしていました。そのことが個人事業主になる頃とても役に立ちました。

名ばかり給与‥とは言っても、給与所得控除の恩恵は受けていてしかも記帳しなくても控除してもらえて楽だったんだなと。だから個人事業主になって2年目からは白色を青色65万円に。そして家内労働者の特例を利用してスッキリ気持ちよく申告しています。

最初は青色申告無理かもと思いましたが、「自分のためにきちんと確定申告しよう。未来の自分のために必ずなる」と決めてがんばりました。

幸い、昨年より売上が少し良いので持続化給付金は今のところは申請しないで済んでいます。

本業なのに雑所得は 私はここ何年かで一番驚いた言葉でした。雑所得で申告ってやはりおかしいです。何ていうか、私なら疑ってとことん調べて自分の納得のいく申告をする。ただそれだけです。

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金子 尚弘

コメントありがとうございます。
自分で調べながらだと大変なことも多かったと思いますが、しっかりと申告されていて素晴らしいです。
本当は、もっと勉強する機会や相談できる場所が多ければ良いのですが・・・
私も微力ながらフリーランスの方などに役立つ記事を書けたら、と思っています。

そして、幸い売上も減っていないとのことで、本当に良かったです。
今後のご発展、お祈りしています!

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