こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
愛知県豊橋市の税理士法人で、代表社員が約2600万円を横領した容疑で逮捕されたというニュースが報じられました。
さらに驚くべきなのは、2018年以降、この法人には15億円以上もの使途不明金があったということです。
このニュースを見て、「税理士ってそんなに儲かっているのか」と思われた方も多いかもしれません。
しかし、僕が今回お伝えしたいのは、そこではありません。
むしろ、税理士や税理士法人がなぜ儲けなければならないのか、なぜ多額のキャッシュを持っておく必要があるのかという、本質的な理由についてです。
これは、実は個人事業主や会社経営者の皆様にとっても、非常に重要な視点だと考えています。
税理士が儲けなければならない理由
まず、税理士という仕事の特殊性について、少し説明します。
税理士は、クライアントの税務申告を代行することが主な仕事です。
そこで万が一ミスがあり、クライアントに損害を与えてしまった場合、クライアントに対して賠償責任が発生します。
ここで重要なのが、税理士法人の社員は無限責任であるということなんですね。(税理士法人の社員というのは、従業員ではなく役員のような立場です)
無限責任と有限責任の違い
一般的な株式会社の場合、出資者である株主は「有限責任」です。
つまり、会社が倒産しても、株主が失うのは自分が出資した金額だけで、それ以上の責任を個人として負うことはありません。
一方、税理士法人の社員税理士は無限責任です。
これは、法人が賠償責任を負った場合、法人の資産だけでは足りなければ、個人の財産まで差し出して責任を果たさなければならないということです。
例えば、税務処理のミスで顧客に1億円の損害を与えてしまった場合、税理士法人の資金が5000万円しかなければ、残りの5000万円は代表社員や社員個人の財産から支払わなければならないということになります。
この責任の重さは、かなりのものですし、万が一の時のために資金を確保しておかなければ最終的にはクライアントにも迷惑が掛かってしまいます。
税理士賠償責任保険だけでは不十分な場合も
税理士には「税理士賠償責任保険」というものが存在しており、これは税理士のミスなどでクライアントに損害が発生した場合に保険金がおりる仕組みです。
その保険金をクライアントへ損害賠償に充てるということですね。
ただ、この税理士賠償責任保険も、全てのケースがカバーされるとは限りません。
保険には免責事項や支払限度額がありますし、保険金が支払われない可能性もあります。(特約である程度はカバーできる部分もありますが)
そのため、無限責任を負う個人の税理士や税理士法人は、通常の事業者以上にキャッシュを厚く持ち、万が一の賠償に自己資金で対応できるようにしておくべきなんですね。
これは、職業の性質上、避けて通れない義務だと思います。
今回の問題の本質
今回のニュースで問題になっているのは、
「お金があったこと」
ではなく、
「そのお金がどこにあったのか」
という点です。
報道によると、税理士法人の資金が、貸付金という名目で代表税理士の個人口座に移されており、更には15億円以上が使途不明になっているようです。
原則的に法人と個人は別人格であり、代表者であってもそれは徹底されるべきです。
百歩譲って、個人側でそのお金をきちんと貯蓄や投資に回し、何かあったら、すぐに賠償に使える状態で管理していたのであれば、まだ議論の余地はあります。
ただ、15億円以上が使途不明というのは、さすがにおかしいですよね。
本来あるべき姿は、税理士法人の資金として内部留保し、賠償リスクに備えることだと僕は考えています。
そのため、今回のケースは明らかに公私混同ですし、あるべき資金の管理がされていないと言わざるを得ません。
まとめ
少し個人的な話になりますが、僕は顧客の平均顧問料の10倍以上の資金を常に残すようにしています。
先ほどもお話ししたように、何かあれば賠償責任がついて回るのが税理士という仕事です。
もし何かあったときに、「税理士賠償責任保険では対応できないので賠償できません」なんて、専門家としてはあり得ないなと。
一方で、個人事業主や会社経営者の皆さんにも、これは共通する話です。
事業賠償責任保険に加入している事業者の方も多いと思いますが、保険でカバーできない事態が生じた時はどうするかなど、万が一のリスクについても考えておくべきでしょう。
税理士はなぜ儲けなければいけないのか、そして、なぜお金を残そうとするのか。
その背景には、こうした構造があります。
「税理士はAIに代替されて無くなる職業」なんて言われますが、AIではミスした時の責任は取ってくれません。
人間が対応する以上はきちんと利益を出し、資金を残して万が一に備えることが必要なんです。


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