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食料品の消費税が0%になったらどうなるのか~資金繰りや飲食店への影響も解説~

こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。

景気対策などの観点から、「食料品を0%にする」という主張を掲げる政党も出て来ました。

これによってSNSなどでは「飲食店にとって大打撃である」といった投稿もあり、その反応も支持するものや間違っているというものなど様々です。

今回は、税理士の立場から以下のポイントで整理・解説します。

① 食料品の消費税が0%になると消費税の負担は変わるのか
② 資金繰りがどう変わるのか
③ 飲食店への影響

飲食店とスーパーで消費税の負担は変わるのか

本シミュレーションでは、「飲食店は全て店内飲食で酒類提供なし」「スーパーは全て食料品のみ販売」という前提としています。

また、現実的には人件費など消費税の課税対象外となる経費もあるはずですが、省略しています。

前提として、消費税の計算方法は次のようになっています。

①本則課税

消費税の計算は売上に対する消費税から仕入や諸経費に対する消費税を差し引く(経費の消費税の方が大きければ還付)

②簡易課税

売上の消費税に対して一定割合(業種によって決まっている)を掛けて計算する

本則課税の場合の比較

まず、本則課税の場合で飲食店とスーパーそれぞれの納税額の変化を比較してみましょう。

飲食店(単位:千円)

現 在食料品0%
売上収入(10%)
(税込22,000で変わらず)
22,00022,000
仕入支払(8%)
(税込6,480→6,000)
6,4806,000
諸経費支払(10%)
(税込8,800で変わらず)
8,8008,800
消費税納付7201,200
納付税額7201,200

スーパー(単位:千円)

現 在食料品0%
売上収入(8%)
(税込21,600→20,000)
21,60020,000
仕入支払(8%)
(税込10,800→10,000)
10,80010,000
諸経費支払(10%)
(税込4,400で変わらず)
4,4004,400
消費税納付/還付400(納付)400(還付)
納付税額400△400

このように、食料品の消費税が0%になることで、確かに飲食店の消費税の負担は増加します。

これは売上に対する消費税は10%のまま変わらないのに、食品の仕入れの消費税がゼロになるためです。

一方で、スーパーは売上の消費税もゼロになるため、仕入れ以外の諸経費の消費税が還付されることになります。

簡易課税の場合の比較

簡易課税の場合は売上の消費税に一定割合を掛けて計算するため、次のようになります。

飲食店は4種事業といって、売上の消費税の40%を納税することになります。

また、スーパーは2種事業といって、売上の消費税の20%を納税することになります。

①飲食店

現状も食料品の消費税が0%になっても売上に対する消費税は2,000千円(20,000千円×10%)で変わらないため、

2,000千円×40%=800千円

となります。

②スーパー

現状は売上に対する消費税は1,600千円(20,000千円×8%)ですが、食料品の消費税が0%になると売上に対する消費税はゼロになります。

そのため、

現状:1,600千円×20%=320千円

消費税率0%:0円

となります。

飲食店の消費税率0%で資金繰りはどうなるの?

本則課税の場合の比較

本則課税の場合は飲食店にとって増税でスーパーにとって減税になるという結果になりましたが、資金繰り全体を考えるとこのようになります。

飲食店(単位:千円)

現 行食料品0%
売上22,00022,000
仕入支払6,4806,000
諸経費支払8,8008,800
消費税納付7201,200
年間キャッシュフロー6,0006,000

スーパー(単位:千円)

現 行食料品0%
売上21,60020,000
仕入支払10,80010,000
諸経費支払4,4004,400
消費税納付/還付400(納付)400(還付)
年間キャッシュフロー6,0006,000

まず飲食店ですが、仕入の消費税が0になるため消費税の納税自体は増加します。

しかし、仕入にかかる金額自体が下がっているため、トータルの資金繰りは変わりません。

また、スーパーについても売上の消費税も0になるため消費税は還付になりますが、売上の際に入る金額も少なくなります。

そのため、スーパーもトータルの資金繰りとしては変わりません。

つまり、食料品の消費税が0%になることで飲食店の資金繰りが厳しくなるというのは、理論的には間違いということになります。

簡易課税の場合の比較

簡易課税の場合、納税額は飲食店は変わらないもののスーパーでは減税になるという結果でしたが、資金繰りではどうなるのか見てみましょう。

飲食店(単位:千円)

現 行食料品0%
売上22,00022,000
仕入支払6,4806,000
諸経費支払8,8008,800
消費税納付800800
年間キャッシュフロー5,9206,400

スーパー(単位:千円)

現 行食料品0%
売上21,60020,000
仕入支払10,80010,000
諸経費支払4,4004,400
消費税納付3200
年間キャッシュフロー6,0805,600

簡易課税の場合、飲食店は消費税の納税額自体は変わりませんが、仕入の際に支払う金額が少なくなります。

そのため、飲食店はその分だけトータルの資金繰りはプラスになります。

一方でスーパーは納税額はゼロになりますが、仕入れ以外の諸経費には10%の消費税が掛かります。

そのため、スーパーはトータルの資金繰りとしてはマイナスとなります。(ただし、諸経費が少ないようなケースはプラスになる場合もあります)

食料品の税率0%が飲食店に与える影響

仮に食料品の消費税が0%になれば、飲食店にとっては厳しい状況になると考えています。

確かに、理論的には資金繰りに影響がない(簡易課税ならむしろプラス)ということは説明した通りです。

しかし、これは売上が変わらないという前提での計算であり、実際には売上が減少する・客数を維持するために値下げをして収益性が悪化するといった飲食店が続出するのではないでしょうか。

現状でも仕入や諸経費などが上がり続ける中で、これ以上の値上げは客離れのリスクが高くてできないというところまで来ているお店も多いはずです。

このような状況で食材だけでなく、スーパーなどのお惣菜やお弁当との価格差が開くことはかなりのダメージになります。

例えば、756円のお弁当と1100円のランチで悩んでいた人は、700円のお弁当と1100円のランチで悩むことになります。

日々の食費となれば、50円変わるというのも結構なものでしょう。

そもそも、「売上が変わらない」という前提自体が難しいため、「飲食店にとって厳しいなんて嘘だ!」と言い切るのも間違いではないかと。

仮に食料品の消費税率0%が実現したら、、生き残り策としてテイクアウトに比重を置くなど、戦略自体を見直して生き残りを図る必要が出て来るでしょう。

関連記事

この論争の中でも「消費税は預り金ではない!」といった主張で議論している方も見掛けました。

「裁判の判決でも書かれている!」と言っていたりしますが、これも片手落ちだったりするんですよね。

参考 【インボイス】消費税は預かり金じゃない、益税も存在しないという主張は本当?ソーシャル税理士金子尚弘のページ

 

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