こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
「キャッシュふる」というサービスがリリースされ、話題を読んでいます。
端的に言えば、寄付先の自治体から返礼品を受け取る代わりに、運営会社から現金が受け取れていると言うものです。
制度の抜け道を突いたビジネスで、思いついた人は賢いと思いますが、制度の趣旨を考えると問題が大きいかなと。
遅かれ早かれ総務省から規制が入るのではないかと思っています。
この記事ではキャシュふるの仕組みをざっくり解説した上で、税金の取り扱いなどにも触れて行きます。
制度の仕組みをざっくり解説
PR TIMESなどのリリース記事を読んだ限りでの理解ですが
①運営会社が寄付者と自治体の仲介を行う
②返礼品を受け取る権利を第三者に売却する
③運営会社が売却額から手数料差し引き寄付者へ送金
といったような仕組みのようです。
図解するとこんな感じでしょうか。
運営会社はあくまでも寄付の仲介と返礼品を受け取る権利の売却をしているという立ち位置ということのようです。
寄付者と自治体をマッチングするサービスは以前からありましたが、これに返礼品を受け取る権利を絡めて現金化するというのが斬新というか何というか。
寄付者は本当に税金が発生しないのか
ふるさと納税の返礼品は一時所得として課税の対象とされています。
この理由は、法人(自治体)からの贈与という認識であり、それに基づいた課税がされているためです。(参考:「ふるさと納税」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係)
このシステムもふるさと納税として扱うのであれば、実質的には次のような流れになるように思えます。
だって、返礼品(やそれを受け取る権利)を自治体がお礼として寄付者に渡すからふるさと納税なんですから。
①寄付者は運営会社を通して寄付をする
②自治体は寄付者に返礼品を受け取る権利を与える
③寄付者は運営会社を通して第三者に返礼品を受け取る権利を売る
返礼品を受け取る権利を売却するということは、その売上は譲渡所得あるいは雑所得として課税されるのではないかと。
例えば食品や日用品などは「通常生活に必要な動産」として売却しても所得税が課されることはありません。古本などをリサイクルショップに販売しても課税されないのはこの理由です。
しかし、実際に返礼品を受け取らずにその「権利」だけを売却すれば「通常生活に必要な動産」には該当しないため課税の対象となるのではないかと。
譲渡所得には50万円の特別控除がありますし、雑所得であっても会社員などの場合は利益が20万円以下であれば申告がいらないという制度もあるので、全員が申告の対象となる訳ではありませんが・・・
ふるさと納税の根本に対する挑戦
ふるさと納税が導入されたそもそもの理由は自分の出身地などへの寄付を後押しするためです。
この辺りはこちらの記事に詳しく書いていますので、興味がある方はぜひ。
参考 ふるさと納税の仕組みと歴史について〜問題点も紹介します〜ソーシャル税理士金子尚弘のページそして返礼品競争が始まり、泉佐野市などが指定を取り消されたことは記憶に新しいでしょう。
多くの人にとって出身地への恩返しではなく、「お得なネットショッピング」と化してしまったふるさと納税。
実際にふるさと納税の相談を受けると、所得が高い方であれば限度額が100万円を超えることになることも珍しくありません。このレベルになると「食品を貰っても食べきれない」みたいな悩みが出て来る訳です。
ここに目を付けたのが今回のサービスなんでしょうが、総務省にケンカを売りに行っている感じですよね。
ふるさと納税の問題については、返礼率を30%程度にするというところで何とか解決を見ていたところですが、もうひと騒動ありそうです。
まとめ
キャシュふるですが、違法行為という訳ではないのでサービスを利用すること自体は問題はないでしょう。
ただ、制度の趣旨を考えると明らかに逸脱していると思いますし、倫理的にどうなのかなと。
公式サイトでは「返礼品をいらないけど地方には貢献したい」と謳っていますが、それならこんなサービスを使わずに寄付をすれば良いだけの話です。
実際は返礼品の現金化サービスですし、遅かれ早かれ規制が入るのではないかと思っています。
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