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事業再構築補助金の公募要項が公表〜ざっくり解説します〜

こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。

事業再構築補助金に関して、公募要項も公開され、内容が明らかになりました。

申請の区分が複数あり、要件も厳しいので補助金申請をするのか事前にしっかりと検討する必要があります。

この記事では「通常枠」を前提に申請要件を整理してご紹介しますので、実際に申請するかの検討材料にして頂ければと思います。

通常枠の概要

ざっくり事業再構築補助金の概要を整理します。

公募期間

第1回の公募は2021年3月26日〜4月30日(18:00)です。

補助対象者

①中小企業者

中小企業庁の「中小企業者」の定義をベースに次の事業者が対象となっています。

株式会社、合同会社は下記の要件を満たせば対象となります。(大企業の子会社などは除く)

*公募要項(第1回)より抜粋

②NPO法人、一般社団法人など

株式会社など営利企業以外でも、従業員数が300人以下であれば対象となります。

ただし、収益事業を行っておらず法人税の申告を行っていない団体は対象外です。

③中堅企業等

資本金が10億円未満かつ従業員数が2000人以下の法人が対象となります。

補助額と補助率

①中小企業者等(上記の①と②)

補助額:100〜6,000万円

補助率:2/3

つまり、補助対象経費の総額は150〜9000万円ということです。

②中堅企業等(上記③)

補助額:100〜8,000万円

補助率:1/2(ただし4,000万円超は1/3)

補助対象経費が8,000万円以下であれば1/2補助で4,000万円が補助額となります。

8,000万円を超える場合は、超える部分が1/3となります。

例えば、補助対象経費が9,800万円の場合は、補助額は4,600万円となります。(8,000万円×1/2+1,800万円×1/3)

事業実施期間

交付決定から12ヶ月以内。

つまり、1年以内に設備投資を実施する必要があるということです。

事業転換の大きさを考えると、かなりスピーディな対応が求められます。

補助対象経費

建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費

が対象となります。

共通する前提条件

事業再構築補助金には大きく5つの分類があり、それぞれ要件が異なります。

しかし、共通する要件があり、前提としてこれらを満たさなければ申請の対象にはならないので、まずはここを確認しましょう。

共通要件

①売上が10%以上減少している

申請前6カ月のうち任意の3か月の合計売上高が2019年1月~2020年3月の同じ期間と比べて10%以上減少していることが要件になります。

なお、任意の3ヶ月とは連続している必要はありません。

例えば、2021年6月に申請するのであれば、2021年1月~6月のうち任意の3か月をピックアップします。

2020年10月,12月,2021年3月を比較対象にするのであれば、比較対象の候補は

①2019年10月

②2019年12月

③2019年3月or2020年3月

となります。

つまり、1〜3月については2019年と2020年のいずれかを選択できるということです。

図にするとこんな感じですね。

②事業再構築に取り組む

事業再構築指針が発表されており、記載されている5分類のいずれかに該当する必要があります。

(新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編)

詳細については記事の後半で解説します。

③認定経営革新等支援期間と事業計画を策定する

事業計画を認定支援機関と協力して作成する必要があります。

なお、補助金の申請額が3000万円を超える場合は金融機関も参加して作成する必要があります。

事業計画については、補助事業修了後3~5年で付加価値額(または従業員一人あたりの付加価値額)が年平均3%以上である必要があります。

申請条件の概要

まず、大枠のイメージを掴みやすいように表に整理をしてみました。

*事業再編は省略しています

多くの分類で共通するのは

・新製品を開発すること

・新市場に進出すること

という点です。

既存の製品や顧客の枠組みで考えるのではなく、製品や市場を変えるような取り組みが必要ということです。(業態転換は除く)

また、新たな取り組みでの売上が自社の総売上でトップ(または10%以上)になることも求められており、少し追加の売上を見込み程度では要件を満たしません。

新製品等を開発するとは?

この要件は、製造業以外の業種が業態転換で申請する場合を除き、ほぼ全ての申請で求められる要件です。

製品開発と言うと製造業のイメージですが、製品だけでなく商品、サービスと読み替えて考えることが可能であり、サービス業なども含めて対象となり得ます。

製造する製品や提供するサービスに新規性があることが必要であり、具体的には次の要件を満たすものです。

①過去に製造・提供した実績がない

自社で過去に製造・提供したことがある場合にはこの要件を満たしません。

新たな製品・サービスにチャレンジすることが求められています。

②製造・提供に用いる主要な設備を変更する

既存の設備を転用するような場合はこの要件を満たしません。

主要な設備を変更する、つまり新たな設備投資を行うことが求められています。

③競合他社の多くが既に製造・提供していないこと

新たなビジネスに対して、同業者の多くが既に進出している場合はこの要件を満たしません。

競合他社の状況をリサーチした上で、この要件を満たすかを説明する必要があります。

④定量的に性能や効能が異なること(計測できな場合は不要)

製造する製品が、現在製造している製品と同等の機能・性能である場合はこの要件を満たしません。

ただし、サービス業などで計測自体が不可能な場合はこの要件は求められていません。

新市場に進出するとは?

【必須】既存製品(サービス)と新製品(サービス)の代替性が低い

代替性とは、新製品を売ったら既存製品の需要が落ちると考えて頂ければ良いと思います。

例えば、アイスクリームの製造販売をしている会社がかき氷の製造販売を始めた場合を考えてみましょう。

この場合は、夏場の需要を取り合うだけになるので、この場合は代替性が高いと判断され要件を満たさないこととなります。

【任意】既存製品(サービス)と新製品(サービス)の顧客層が異なる

既存製品と新製品の顧客層が異なることを説明した場合、審査において高い評価が与えられることとなります。

単に「ターゲットの客層を変えます」と記載するだけではなく、製品需要の分析や価格戦略などを示して説明することが求められています。

各申請区分の詳細について

業種転換について

業種転換は「新製品や新サービスにより主たる業種を変更する」というものです。

その上で、新事業が5年以内に売上構成比でトップになることが求められます。

業種とは日本標準産業分類に基づく大分類のことで、不動産業が宿泊業に変更するといった、かなり大掛かりな事業再構築を行う場合がこの分類に該当します。

日本産業分類の大分類はこちらを参考にしてください。

見ていただければ分かると思いますが、かなり大きなテコ入れをしなければこの条件は満たさないと考えられます。

【業種転換に該当する事例】

①物品賃貸業→宿泊業

レンタカー店舗を経営している事業者が、ファミリー向けの貸切ペンションを経営を開始し、貸切ペンションの事業が売上構成比でトップになる場合。

 

②製造業→情報通信業

製造業の事業者が工場を閉鎖し、跡地にデータセンターを建設し、データセンター事業が売上構成比でトップになる場合。

このように、業種転換を検討する場合は、かなり大掛かりな決断が必要になると思われます。

事業転換について

業種転換は「新製品や新サービスにより、主たる業種を変更せずに主たる事業を変更する」というものです。

その上で、新事業が5年以内に売上構成比でトップになることが求められます。

業種とは日本標準産業分類に基づく中分類または小分類あるいは細分類のことで、事業転換ほどではありませんが、大きな事業の見直しが必要です。

中分類などについては、こちらの大分類をクリックして確認してください。

【事業転換に該当する事例】

①日本料理店→焼肉店

日本料理店が焼肉店を新規開業する場合に、焼肉事業の売上構成比がトップになる場合。

 

②金型製造業→ロボット製造業

プレス加工用金型を製造している事業者が、産業用ロボットの製造を開始し、産業用ロボットの売上構成比がトップになる場合。

業種転換ほどではありませんが、事業転換も簡単ではないということが分かると思います。

新分野展開について

業種転換は「新製品や新サービスにより、主たる業種または主たる事業を変更せずに新製品を製造し、新市場に進出する」というものです。

なお、新製品の製造は、製造業に限らず幅広い商品・サービスの製造・提供が含まれます。

その上で、新事業が5年以内に売上構成比の10%以上を占めるようになることが求められます。

【新分野展開に該当する事例】

①航空機部品の製造→医療機器部品の製造

航空機部品を製造していた業者が、医療機器の製造に着手し、医療機器部品の売上構成比が10%以上になる場合。

 

②ウィークリーマンション→レンタルオフィス

ウィークリーマンションを営んでいた事業者が、テレワーク需要を取り込むためレンタルオフィス事業を開始し、レンタルオフィスの売上構成比が10%以上になる場合。

新分野展開は、既存事業と比較的近い領域でターゲット等を変えて事業を組み直す場合は対象になり得るでしょう。

なお、主たる業種または事業を変更しないという要件のため、中分類以下の分類が変わったとしても対象になると考えられます。

そのため、新事業を売上構成比トップまで育てるのは難しい場合は、事業転換ではなく新分野展開での申請も可能と思われます。

業態転換について

業種転換は製造業とそれ以外の業種で求められる要件が異なります。

なお、業態転換については、業種・事業の変更に関する要件はありません。

製造業の場合

・製品の提供方法を大きく変更する(製造方法等の新規性)

・新製品は過去に製造・提供した実績がない

・5年以内に売上構成比で10%以上になる

ことが要件になっています。

製造業以外の場合

・商品やサービスの提供方法を大きく変更する(製造方法等の新規性)

・既存設備の撤去または新製品やサービスでデジタル技術を活用する

・5年以内に売上構成比で10%以上になる

ことが要件になっています。

製造方法等の新規性について

製造業、非製造業に共通する「製造方法等の新規性」ですが、次のように定義されています。

①過去に同じ方法で製造・提供した実績がない

過去に自社で製造・提供したプロセスと同じ場合にはこの要件を満たしません。

新たな方法で製品・サービスを提供することが求められています。

②製造・提供に用いる主要な設備を変更する

既存の設備を転用するような場合はこの要件を満たしません。

主要な設備を変更する、つまり新たな設備投資を行うことが求められています。

③競合他社の多くが既に製造・提供していないこと

新たなビジネスに対して、同業者の多くが既に進出している場合はこの要件を満たしません。

競合他社の状況をリサーチした上で、この要件を満たすかを説明する必要があります。

④定量的に性能や効能が異なること(計測できな場合は不要)

製造する製品が、現在製造している製品と同等の機能・性能である場合はこの要件を満たしません。

ただし、サービス業などで計測自体が不可能な場合はこの要件は求められていません。

【業態展開に該当する事例】

①オンラインヨガ教室の立ち上げ

対面のヨガ教室を運用していた事業者がオンラインヨガ教室の立ち上げをし、オンラインでの売上構成比が10%以上になる場合。

 

②デジタル技術を活用して製造プロセスを見直す場合

健康器具を製造している事業者が、AI・IoTなどの技術を活用し製造効率を向上させ、付加価値の高い製品を製造し、新しい製造方法での売上が売上構成比が10%以上になる場合。

業態転換の場合、製造方法等の新規性の要件の中に「競合他社の多くが既に製造・提供していないこと」と言うものがあります。

多くのヨガ教室などがオンライン化している状況の中で、このような事例が手引きに例示されているのは違和感がありますが、「競合他社で一切製造・提供されていない」という条件ではないため、幅広い解釈がされているのかもしれません。

まとめ

発表当初は、予算規模も大きく「これはチャンスだ」という反応も多くありましたが、手引きが公表され、要件が明確になると「これは結構厳しいのでは?」という声が多くなった印象です。

実際にコロナの影響を受ける中で新規事業を推進するのは資金面を中心に多くのハードルがあると思います。

なお、申請にあたってはGビズIDプライムアカウントが必要になります。

申請が混み合っているという話も聞きますので、補助金申請を検討している場合は申し込みを早めにしておいた方が良さそうです。

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