こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
東京都のベビーシッター代補助事業について、Twitterで税金爆死と言うワードがトレンド入りしました。
結論から言えば、東京都から補助されたシッター代が利用者の所得となり、補助を受けた人の所得税や住民税が増えるというものです。
この話題について2月14日放送のAbema Primeで解説したのですが、短時間だったので補助の仕組みや税金の取り扱いなどについて改めてご説明したいと思います。
シッター代補助とはどういう制度なのか
東京都の制度は、共働き世帯やシングル家庭でベビーシッターを依頼した際の金額を補助するというもの。
具体的には、自己負担が1時間150円になるように実際のシッター代との差額を東京都が利用者に補助する仕組みです。
例えば、シッター代が1時間2500円だとすると、2250円が補助されることになります。
金子
ただ、そうとも言い切れないんです。
トレンド入りした「税金爆死」と言う言葉の通り、この制度で受け取った補助金は利用者の所得となり、課税されてしまうのです。
理由は何であれ、お金を受け取るということは所得になり、課税の対象になってしまいます。
【補足】
なお、損害賠償金などは課税されないのですが、これは法律で「非課税にする」と書かれているからです。
シッター代を非課税にするという法律はないので、課税されてしまう、という訳です。
フルタイムで働いている場合など利用時間が多ければ当然補助の金額も大きくなります。
そうなると、半端じゃない金額の税金を支払うことに…
実際、いくら税金が増えるのか?
この補助金は雑所得として課税されることになります。
ざっくり説明すると、会社員でお給料もらっている場合、そのお給料に補助金の金額を上乗せして税金の計算をすると言うことです。
そのため、年収が多い方ほど補助金に対して課税される金額も増えると言うことになります。
例えば、平日フルでベビーシッターを依頼したとすると、次のようになります。
なお、この金額は翌年に課税される住民税も含めた金額となっています。
年収 | 補助なし | 補助あり | 増税額 |
300万円 | 約16万円 | 約119万円 | 約103万円 |
400万円 | 約23万円 | 約137万円 | 約114万円 |
500万円 | 約36万円 | 約156万円 | 約120万円 |
(注1)シッター代の補助は1日8時間を月20日利用し、補助額は1時間あたり2,250円という前提で、年額432万円として計算しています。
(注2)各種控除の状況で実際の金額は変わりますので、あくまでも目安です。
ざっくりですが、平均的な正社員の方であれば補助額の20%〜30%ほどは税金が発生することとなります。
税金以外にも影響が
所得が増えれば税金が増える訳ですが、それ以外にも影響が出てしまう場合があります。
この辺りはAbemaPrimeでもお伝えしましたが、このような感じです。
#アベプラ で無事に使って頂きました。
乙武さんに写真のインパクトが強すぎる言われた(´・_・`) pic.twitter.com/8giJouC4dz— 税理士 金子尚弘 / Kaneko Naohiro (@innovator_nao) February 14, 2020
行政サービスは所得に応じて自己負担が変わるものも少なくありません。
例えば、保育園に入れなかったためベビーシッターに預けて復帰した人が、翌年から認可保育所に預けられたとします。
その場合、保育料は前年の所得によって決定されるため、シッター代の補助を含めた所得で保育料が決まることとなります。
住んでいる自治体によって保育料の自己負担額は変わりますが、平日は毎日預けているような場合では、月の保育料が一気に2~3万円増えてしまうことも。
また、番組で紹介したもの以外にも、シングル世帯がシッター補助を受けることで寡婦(寡夫)控除の適用対象外となることも考えられます。
こうすれば税金爆死は防げたのに・・・
この税金爆死問題、実は補助金の仕組みを変えれば防げたのです。
東京都のシッター代補助に税金が掛かるという話。
利用者に補助するからこういった話になるんだけど、都が指定の事業者に補助金という形で流し、利用料そのものを安く抑えればこんな話にはならないのよね。
もちろん、どこを指定事業者にするか等で問題は残るんだろうけど。— 税理士 金子尚弘 / Kaneko Naohiro (@innovator_nao) February 13, 2020
このツイートで指摘したように、補助金をベビーシッターへ支払えばこんなことにはならないのです。
利用者に税金がかかる理由は、利用者がお金を受け取るからであり、お金の流れを少し変えればこのような問題は起こらないのです。
この仕組みにすればシッターの収入は変わりませんし、利用者の税金が増えることもありません。
もちろん、どのベビーシッター業者を補助の対象にするかなどの問題もありますし、癒着・不正の原因にならないとも言い切れません。
とは言え、利用者に税負担が生じるような仕組みが良いとも言えないでしょう。
まとめ
ご説明したように、現行の制度では補助を利用すると税金が増えてしまう、という本末転倒の自体が発生してしまいます。
もちろん、何も補助がないよりはマシなのですが、ギリギリの家計で子育てをしている世帯にとってはかなり痛い落とし穴だと思います。
補助金をシッター会社へ支払うなど、少し仕組みを変えるだけで回避できたのに・・・と思ってしまいます。
また、東京都の資料も課税されることについては触れられていますが、その試算は「所得税だけ」で計算されています。
自分が徴収する住民税を試算に入れないなんて、「少しでも影響を少なく見せたい」という思惑があるのでしょうか。
何とも不親切というか、不誠実だと感じてしまうのは私だけでしょうか。
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シングル世帯は寡婦(寡夫)控除という制度があり、所得500万円以下などの要件を満たせば35万円の所得控除が受けられます。
2020年の改正項目ですので、ご確認を。
参考 令和2年度(2020年度)税制改正大綱のまとめと解説ソーシャル税理士金子尚弘のページ
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