こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
自宅は一生で一番高い買い物なんて言われたりもしますが、多くの人は住宅ローンを利用して自宅を購入していることでしょう。
国としても建設業界への配慮もあってか、持ち家に対しては破格と言っても税制優遇をしています。
その代表的な制度が住宅ローン控除。
所得税額への影響は大きく、年末調整で大きな金額の還付になることもあります。
なお、年末調整で住宅ローン控除の計算ができるのは、住宅購入から2年目以降です。
住宅を購入した年は確定申告をする必要があるので、ご注意ください。
ここでは、年末調整で住宅ローン控除を適用する場合の解説をしていきます。
住宅ローン控除の内容をざっくり説明
住宅ローン控除は住宅取得を後押しする国の政策と関わりの深い制度で、1972年に創設され、今も続いています。
制度の概要としては、住宅ローンがある人に対して、住宅ローンの年末残高に対して一定割合を所得税から控除するものです。
年末残高が3000万円の場合に住宅ローン控除を適用すると、3000万円×*1%=30万円の所得税が控除されます。
*2022年以降に購入した場合は0.7%となります
なお、控除割合や限度額は住宅の購入時期により異なります。
ご自身が当てはまる欄を確認した上で適用するようにしてください。
制度が複雑なので、表を2つに分けています。該当する年度のものを確認してください。
2019年9月30日までに購入した場合
購入時期 | 控除期間 | 控除額 | 控除限度額 |
2007年1月1日~ 2007年12月31日 | 15年 | 年末残高 ×0.4% | 10万円 |
2008年1月1日~ 2008年12月31日 | 15年 | 年末残高 ×0.4% | 8万円 |
2009年1月1日~ 2010年12月31日 | 10年 | 年末残高 ×1% | 50万円 |
2011年1月1日~ 2011年12月31日 | 10年 | 年末残高 ×1% | 40万円 |
2012年1月1日~ 2012年12月31日 | 10年 | 年末残高 ×1% | 30万円 |
2013年1月1日~ 2013年12月31日 | 10年 | 年末残高 ×1% | 20万円 |
2014年1月1日~ 2019年9月30日 | 10年 | 年末残高 ×1% | 40万円 |
【補足】
*2007年、2008年購入分については購入後10年間は控除割合が異なりますが、現在では適用がないので省略しています。
⁂2014年~2019年購入分の限度額は、購入時の消費税が5%の場合は20万円となります。
2019年10月1日〜2020年12月31日に購入した場合
消費税率8%で購入した場合
購入時期 | 控除期間 | 控除額 | 控除限度額 |
2019年10月1日~ 2020年12月31日 | 10年 | 年末残高 ×1% | 20万円 |
消費税率10%で購入場合
購入時期 | 控除期間 | 控除額 | 控除限度額 |
2019年10月1日~ 2020年12月31日 | 13年 | *年末残高 ×1% | 40万円 |
*この控除額は10年目までの計算です。11〜13年目については、控除額が次のいずれか少ない金額となります。
①年末残高×1%
②(住宅等の購入額ー消費税額)×2%÷3
なお、①の借入金の年末残高と②の住宅等の購入額から消費税を差し引いた金額は、いずれも4000万円が上限となります。
2021年1月1日〜2021年12月31日に購入した場合
購入時期 | 控除期間 | 控除額 | 控除限度額 |
2021年1月1日~ 2021年12月31日 | 10年 | 年末残高 ×1% | 40万円 |
【注意点】
2022年に購入した場合には、2022年の年末調整で控除をすることはできません。
必ず確定申告をするようにしてください。
住宅ローンの特徴
ちなみに、住宅ローン控除が配偶者控除や生命保険料控除などと違うのは、住宅ローン控除が「税額控除」である点です。
配偶者控除などの所得控除の場合、所得税に与える影響は「控除額×税率」となります。
そのため、高所得者の方が控除額が大きくなる仕組みになっています。
例えば、扶養控除(38万円)の適用を受ける場合の控除額は
・税率10%の人:38万円×10%=3.8万円
・税率40%の人:38万円×40%=15.2万円
となり、大きく控除額が変わります。
一方、住宅ローン控除の場合は「税額」が控除されるため、税率による有利不利はありません。
ただし、そもそもの所得税額が少なければ控除額を使い切れないということは考えられます。
(所得税で引ききれない場合は住民税から控除されますが、それでも全額控除できない場合もあります)
住宅ローン控除申告書の記入方法
住宅ローン控除の申告には、「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」への記入が必要になります。(長い・・・ここでは「住宅ローン控除申告書」としておきます)
住宅ローン控除申告書に必要事項を記入する訳ですが、この書類を記入するためには金融機関からの住宅ローンの残高証明書が必要になります。
手順1:残高証明書の年末残高を記入する
残高証明書の様式は様々ですが、「年末残高」の金額を以下の欄に記入します。
建物と土地の両方をローンで購入していれば見本のように「住宅及び土地等」の欄に記入します。
建物だけの場合は「住宅のみ」、土地だけの場合は「土地等のみ」の欄に記入します。
手順2:自宅の購入金額と面積を記入
次に、住宅ローン申告書の下に付いている控除証明書から、自宅の購入金額と面積の情報を記入します。
ここも数字を写すだけの作業です。
手順3:居住用部分の借入金残高を計算する
住宅ローン控除の対象になるのは、居住用部分に対応する金額のみです。
年末の住宅ローン残高に手順2で記入した③の居住用面積の割合を掛けて、対象となる住宅ローン残高を求めます。
(ほとんどの場合は居住用割合が100%なので、年末の住宅ローン残高=対象となる住宅ローン残高になります)
手順4:住宅ローン控除の金額を計算する
手順3で求めた住宅ローン控除の対象となる住宅ローン残高に、控除割合を掛けて住宅ローン控除の金額を計算します。
この控除割合ですが、住宅を購入した年によって変わるため、きちんと確認する必要があります。(住宅ローン控除申告書に控除割合が書かれています)
住宅ローン控除の注意点
年末調整においては、上記の手順通りに記入されていることがチェックの中心になりますが、イレギュラーな場合もあるため、そういう場合は注意が必要です。
オーバーローンになっている場合
多くの場合は建物と土地の金額を上限に住宅ローンを組んでいますが、銀行によっては不動産仲介手数料や保険料なども住宅ローンの対象としている場合があります。
しかし、住宅ローン控除の対象となるのは建物と土地に関する借り入れのみですので、建物と土地の金額を超える場合は注意が必要です。
紹介した手順通りに記入されていればミスは起こりませんが、
計算をすっ飛ばして、いきなり住宅ローンの年末残高に控除割合を掛けて計算している場合があったりします。
住宅ローン控除申告書の④の欄に①(住宅ローンの年末残高)と②(建物と土地の購入額)の少ない方、と書いてあるんですが・・・
住宅ローンの借り換えがあった場合
金利などの理由で住宅ローンの借り換えを行う場合があります。
この場合は調整計算が必要になる可能性があるので注意が必要です。
まず、借り換え時の状況を確認します。借り換え時点で、当初の住宅ローンの残高と借り換えた住宅ローンの借入額のどちらが多いかで計算が変わります。
①「当初の住宅ローン残高≧借り換え額」の場合
この場合は、特に調整計算は必要ありません。
借り換えた後の住宅ローンの年末残高を使って計算すればOKです。
②「当初の住宅ローン残高<借り換え額」の場合
この場合は調整計算を行う必要があります。
借り換え後の住宅ローンの年末残高×(借り換え時の当初の住宅ローン残高÷借り換え額)
上記の金額を住宅ローンの年末残高として計算をすることになります。
この場合に借り換え後の住宅ローンの年末残高で計算してしまうと、当初の限度額以上に控除されることになるため、それは控除しすぎだよ、ということです。
連帯債務になっている場合
建物や土地を共有にしている場合には住宅ローンが連帯債務になっている場合があります。
連帯債務の場合、債権者(銀行)は連帯債務者(通常は不動産の共有名義人)のどちらからいくら返済してもらおうが問題になりません。
しかし、税務上は不動産の共有割合に応じて住宅ローン控除を受けることになります。
(ごく稀に例外もありますが、住宅ローン控除とは別に贈与の問題などが生じるため、あえて選択する人は少ないでしょう)
連帯債務の場合は、備考欄に「連帯債務として、借入金の〇〇%を負担することとしています」などと記入します。その上で、残高証明書の金額のうち負担割合の金額を控除申告書の年末残高欄に記入して計算を始めてください。
連帯債務のポイントは
住宅ローン控除申告書に連帯債務の負担割合(=不動産の共有割合)が記入されているか
住宅ローン控除の額が、負担割合に応じて計算されているか
ということですね。
まとめ
単純なようで、イレギュラーなパターンが出てくると面倒な住宅ローン控除。
注意すべきポイントは次の通りです。
・購入時の消費税が10%の場合は控除計算が異なるが正しく計算されているか
・居住割合が100%ではない場合、きちんと計算されているか
・オーバーローンになっている場合、きちんと計算されているか
・借り換えがあった場合、きちんと計算されているか
・連帯債務となっている場合、負担割合に応じた計算になっているか
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