こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
「良かれと思って打った手立てが思わぬ弊害を生んでしまった」
なんて経験をしたことがある人も多いと思います。
例えば、少子化は多くの国で直面している課題ですが、日本ではなかなか思うような成果が出ていません。
それどころか待機児童問題で「日本死ね」みたいな話が出てくる始末。
子どもを育てやすい環境を整えるなどのポジティブな施策もありますが、中には「独身者に増税をする」というネガティブ感たっぷりな独身税を導入していた国もあるんです。
結婚する・しないの自由を無視した懲罰的な税制だった訳ですが、今でも独身税が残っている国はありません。
なぜ導入され、なぜ消えたのか。
これは税金に限らず「ある目的を達成するための施策が思わぬ結果をもたらすことがある」という教訓になるんじゃないかと思い取り上げてみます。
もちろん、ビジネスでの意思決定にも繋がる話です。
色々な国で導入されていた独身税
最初に独身者や子どもがいない人に対するペナルティを課したのは古代ローマだと言われています。
子どもがいない25歳〜60歳の男性と20〜50歳の女性にペナルティがあったそうです。
また、オスマン帝国でも独身税に近い制度があったと言われています。
そして近代にではアメリカのミズーリ州で1821年に独身税が導入され、南アフリカ、イタリア、ソビエト連邦などでも独身税があったようですが、多くの国では早々に廃止されています。
ただ、ソビエトでは1941年から1990年まで「子なし税」が長期にわたり存在していました。
25歳から50歳までの子どもがいない男性と、20歳から45歳までの子どもがいない既婚女性が対象で、税額は税金で賃金の6%程だったそうです。
他にもポーランドやルーマニアなど社会主義国で独身税などは導入されており、民主主義的な国では受け入れられ難いのでしょう。
イタリアでも存在していたのはムッソリーニ政権の時だけだったようですし。
それに、そもそも独身税を課したからと言って出生率が増えた訳ではないので、目的は果たせず終わった税と言っても良いでしょう。
「制度を変えたらどうなるか」を考えてみる
今の日本からすれば「トンデモ」な税金に見える独身税や子なし税ですが、子どもを増やすという目的があり、大真面目に議論されていたのでしょう。
(中には戦費調達が目的だった国もあるようですが)
恐らく、当時の指導者が考えていたシナリオはこんな感じでしょう。
1.独身税・子なし税を導入する
2.増税を嫌って結婚や出産が増える
3.人口も増えて国家が繁栄する
ただ、実際にはどうなったかと言うと
独身者にとってはお金が貯められずに結婚に踏み切れない
既婚者であっても生活が苦しければ子どもを産むよりも税金を払った方がマシ
みたいな感じだったんじゃないかと。
ただ、「子どもを増やす=出生率の増加」だけが答えな訳ではなく、例えば乳児死亡率を抑えることができれば、「大人になる子ども」を増やすことはできます。
「産まないから罰金的な税を課す」のではなく、安全に産み育てる環境を作る方が結果的には子どもが増えるという可能性はありますよね。
(1941年当時の医療や公衆衛生では限界があったとは思いますが)
結局のところ、
「選択した打ち手が回り回ってどんな結果をもたらすのか」
ということをもっと考えれば、こんな意味のない税金は導入されなかったのではないか、と思うのです。
これはビジネスでも一緒で、
「良かれと思って実行したキャンペーンで客離れが起きた」
みたいなことが起きてしまう訳です。
例えば、一時期マクドナルドが格安路線を打ち出しましたが、「マナーの悪い客層も増えて店内で安心して飲食できなくなった」みたいなことも起こりましたよね。
その後、値上げなども行い、雰囲気や店舗環境の改善に乗り出した訳ですが。
「風が吹けば桶屋が儲かる」じゃないですが、打ち手の2つ、3つ先の影響まで考えておくべきだと思うんですよね。
まとめ
独身税だって、子どもを産み育てるにあたって何が障害になっているかを考えれば違う打ち手になっていたと思うんですよね。
少なくとも「税金減るから子ども増やそうぜ」なんて人はほぼいなかったはずです。
だって、独身税が課税されなくなったとしても、それ以上の生活費が発生する訳ですから。
ビジネスで何か打ち手を考える時も
・解決したい問題は何か
・その問題を解決するには何が必要か
というポイントは最初に考えないといけない訳です。
その上で打ち手を決めた時に2つ、3つ先の影響も想像しておくこと。
そうしないと思わぬ落とし穴が待っているかもしれません。
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