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【2024年衆院選】各党の税制と社会保険に関する公約まとめ

こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。

自民党の総裁選が終わり早期に解散となり慌ただしく始まった今回の選挙ですが、主要政党の公約の中で税制や社会保険制度に関する公約を整理してみました。

自民党

マニフェストを見た中でさすが政権与党と思わせる内容でした。

今回取り扱うテーマ以外でも幅広く、かつ細かな内容まで言及されており、各地域の声を聞いていると感じます。

自民党の選挙公約はこちらです。

所得税関連

新NISAやiDeCoの普及、促進について言及されていました。

貯蓄から投資への流れを継続し、NISAやiDeCoの税制優遇を継続・拡大するものと思われます。

法人税関連

①中小企業の賃上げ促進

いわゆる賃上げ促進税制の継続などで賃上げを支援するものと思われます。

②中小企業の設備投資の促進

設備投資減税を維持継続するものと思われます。

③中小企業のM&A支援

事業承継税制やM&A税制で継続して支援するものと思われます。

社会保険

公約では「年収の壁の見直しで働き方に中立な社会保険制度」を目指すとして、基礎年金の受給額の底上げなどが書かれています。

そのため、現在でも進められている社保加入ベースの拡大を進めるものと思われます。

全体として

税制に関しての公約はこの程度で、特に目新しいものはありませんでした。

与党ということもあり、現在の方針を継続して行くということだと思います。

税制と社会保険以外では、手形の支払いサイトの短縮や小切手の電子化にも言及されており、地方の中小企業の声も聞いているなという印象です。

立憲民主党

所得税関連

①中間層復活のため累進課税の強化

具体的にどの税率をいじるのかは分かりませんが、累進課税の「強化」ということなので高所得者に対する税率引き上げが念頭にあるのではないかと思います。

また、所得控除から税額控除への移行にも触れられています。

所得控除は高所得者ほど効果が大きいものなので、中間層の税負担を減らし、高所得者への課税強化という流れがベースになっていると思います。

②課税最低限の引き上げ

現在の課税最低限は基礎控除の48万円(給与所得者の場合は給与所得控除も含めて103万円)です。

いくらまで引き上げるとは明記されていませんが、低所得者には有利に働く内容だと思われます。

③金融所得課税は分離課税で累進課税を導入し、総合課税に移行

上場株式の配当や譲渡などは現在分離課税で税率は約20%(住民税も含む)です。

これは所得金額に限らず一定であるため、金融所得が多い富裕層は税の負担割合が低いという指摘もあります。

そのため、累進税への移行や総合課税への移行を訴えています。

④給付付き税額控除の導入

給付付税額控除ですが、一定額を所得税などから税額控除を行い、控除しきれない部分は給付を行うという制度です。

基礎控除ではそもそも所得が基礎控除以下の人にとっては何のメリットもないので、ベーシックインカムにも近い制度になるでしょう。

ただし、税制として手当するため、確定申告が必要になると思われます。

なお、給付付き税額控除の具体的な金額などは記載されていません。

法人税関連

①中小企業の軽減税率を恒久化

現在中小企業は所得800万円以下の部分には軽減税率が適用されています。

これは租税特別措置法で手当されていますが、本法に取り込み恒久化すると訴えています。

ただ、実際には軽減税率は長期に渡って継続しているので、実態としては恒久化に近い状態になっているとも言えます。

②ITプラットフォーム企業を念頭に国際課税の整備

アメリカなどのIT企業のサービスを日本ユーザーが利用しても、その企業が日本に拠点を持たない場合は日本の法人税が課税されないというケースがあります。

このような問題を念頭に、国際IT企業などへの課税に触れています。

消費税関連

インボイスの廃止ついて触れられています。

インボイスについては、”免税事業者が取引過程から排除されたり、廃業を迫られたりする等の問題がある上に、従前の「区分記載請求書等保存方式」でも適正課税は可能である “として廃止を訴えています。

相続税関連

相続税・贈与税の累進強化が訴えられています。

社会保険関連

「より多くの短時間労働者が厚生年金に加入できるよう適用拡大をさらに進めます」と書かれており、加入ベースの拡大を進めるものと思われます。

全体として

これら以外にも印紙税の廃止やガソリン税のトリガー条項の凍結などにも触れられています。

税制に関しては富裕層への課税強化が基本方針になっていると思います。

また、消費税の減税ではなく、給付付き税額控除を主張している点は個人的に評価できると思います。

導入にあたっては細かな制度設計など課題も多いでしょうが、一律で消費税率を引き下げるよりは効果が高いと思います。

国民民主党

国民民主党の選挙公約はこちらです。

「手取りを増やす」をスローガンにして、現役世代に向けた政策が充実している印象があります。

所得税関連

①基礎控除の引き上げ

マニフェストでは「基礎控除を103万円から178万円へ引き上げ」と書かれていますが、基礎控除は48万円なので、給与所得控除も含めた金額で述べられています。

つまり、基礎控除123万円+給与所得控除55万円で178万円にするということだと思われます。

②若者減税

「若者減税(所得税・住民税を減免)を導入」と書かれていますが、具体的にどの年齢層にいくら減税するのかは明記されていません。

③日本型ベーシックインカム(給付付き税額控除)

立憲民主党も主張している給付付き税額控除を国民民主党も主張しています。

また、導入にあたりマイナンバーと全銀行口座の紐付けにも言及されています。

④給与所得控除の見直し

職業による税制の不公平の見直しの観点から給与所得控除の見直しについて触れられています。

恐らく縮小の方向になるでしょうが、諸手当の非課税対象の拡大や特定支出控除の拡大を合わせて導入すると主張されています。

⑤年末調整の廃止

年末調整は事業者の事務負担が大きいとして、全員確定申告制度も視野に検討を進めると書かれています。

⑥暗号資産の分離課税化

現在は総合課税となっている暗号資産の分離課税への移行が主張されています。

法人税関連

①賃上げ促進税制の拡充

賃上げを促す税制を拡充すると書かれており、現行の法人税だけでなく固定資産税や消費税の減税で支援するとされています。

実際にどのような仕組みを構築するかは不明です。

②成長分野への投資減税

半導体、蓄電池、AI産業などへの減税で設備投資などを促すと書かれています。

現行の設備投資税制をベースにしつつ、減税枠や対象資産などを拡充するものと思われます。

消費税関連

消費税率の5%への引き下げとインボイス制度の廃止が書かれています。

減税については賃金上昇率が物価+2%になるまでの間をされています。

社会保険関連

年収の壁対策として、働き方に中立な制度へを目指すとされています。

この中で3号被保険者制度の見直しなどにも触れられています。

また、中小企業に新規正規雇用の増加分に対応する社保負担額の半分相当を助成する、低所得者への社会保険料負担を軽減することも主張されています。

全体として

現役世代への減税や社会保険料負担の軽減などを中心に述べられており、賃上げや設備投資税制については現状維持または拡大の方向と思われます。

また、印紙税の廃止や中小企業への約束手形での支払いを禁止(即時払いを原則)とするなどの主張もありました。

特に、物価上昇が進む中での基礎控除の拡大について触れられているのは筋が通っていますし、真っ当な主張だと思います。

日本維新の会

維新の会の公約はこちらです。

マニフェストの中で税制改革の項目があり、集中的に述べられています。

税制の抜本改革

「成長のための税制を目指し、消費税のみならず所得税・法人税を減税する”フロー大減税”を断行し、簡素で公平な税制を実現します。」

「フロー大減税を行うと同時に、ストック課税はそのあり方を見直すなど、”フローからストックへ”を基軸とした税体系全体における抜本的な改革を行います。」

と述べられており、現行のフロー中心の課税からの見直しが主張されています。

ただ、具体的にはどのような制度設計になるかは不明です。

また、マイナンバーの銀行口座の紐付けの徹底により効率かつ公平な徴税を行うことも主張されています。

所得税関連

①金融所得課税の見直し

金融所得課税の総合課税化などにより課税の適正化を行うことが記載されています。

②エンジェル税制の拡大

エンジェル税制のさらなる促進やストックオプション課税の見直しで投資を促進すると書かれています。

法人税関連

①租税特別措置法の廃止

租税特別措置法を廃止し、簡素、公平、活力の税制を目指すとされています。

②交際費課税の見直し

交際費課税の負担を軽減することで企業・経済活動の活性化を促すとされています。

消費税関連

地方自立のための財源として地方税へ移行し、税率も地方で設定できるようにすると書かれています。

社会保険関連

「年収の壁」の撤廃に向けた抜本的な制度改革を行うと書かれています。

具体的には、第三号被保険者制度の廃止や基礎年金の税方式化を検討し、子育て給付の拡大などとセットで提案するとされています。

全体として

他党と比べて、現行制度の延長ではなく、抜本的な改革を目指していると考えられます。

また、提案している内容も新規事業への投資や企業活動の活性化など、企業の育成や経済の活性化を念頭に提案されているように感じます。

まとめ

各党の税制に関する主張を整理するとこのようになります。

共産、社民、れいわについてはマニフェストの分量を考慮して図表にまとめるに留めています。

 

 

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