こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
会社で役員や従業員が出張する際に経費を実費精算するのではなく、日当や宿泊費という形で支給することも認められています。
ネットでの情報を見ると節税と言う観点から紹介されていることが多いのですが、これは本質を考えると筋違いだと思います。
私も顧問先に日当の説明する事はありますが、あくまでも経費精算の手間を省略するという観点から話をしています。
ネット上では話が一人歩きして節税策の定番みたいな紹介のされ方がしていますが、正しい考え方を理解していただければ。
おまけ程度に「怪しい節税策」にツッコミも入れてみようかと。
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日当が非課税になる本当の理由
確かに一定の要件を満たす日当を受け取っても、その役員や従業員に所得税が課税されることはありません。
例えば、地方から東京に出張する場合を考えてみてください。
東京駅までの新幹線や羽田空港までの航空券は会社で予約したとしても、そこから目的地までの電車代やバス代などは当日に出張する本人が支払うことがほとんどだと思います。
また、出張の場合は定時を超えて拘束されることも珍しくないため、夜食などを取ることもあるでしょう。
このような通常の勤務では発生しない経費を補填するためのものが日当なんですよね。
これをいちいち記録して経費精算をすれば出張する本人も面倒ですし、経理社員も手間がかかります。
日当であれば一律の金額を支給すれば済みますし、経費精算のように領収書をチェックする必要もありません。
こういった経理実務の要請もあり、通常使われるであろう金額の範囲内であれば所得税を課税しないという取り扱いになっています。
確かに実際に使った金額が支給された日当を下回れば無税でポケットマネーにすることはできますが、普通は微々たる金額です。
非課税となる理由は少しの金額であれば懐に入ったとしても課税しなくても良いでしょう、ということ。いちいち課税していたら立替精算が基本になり、実務に大きな負担になってしまいます。
こんな「少しだけの節税効果」よりも、経費精算の手間を省略するメリットの方がはるかに大きい訳です。
ここまで読んで頂ければ理解できると思いますが、宿泊費や諸経費を実費精算した上で高額な日当を出しても非課税な訳がないのです。
いくらまでなら非課税で日当を支給できるのか
所得税法基本通達に記載されている非課税となる範囲は「旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品」です。
つまり、先ほどの雑費的な支出に加えて、目的地までの運賃やホテル代も日当として支給することが認められているということです。
ただし、航空券などは価格の幅も大きく、正規運賃を下回る金額で購入できる事は珍しくありません。そのため、新幹線代や航空券まで日当としてざっくり支給する会社は皆無ではないかと。
一方で、マイカーを使って移動してもらうなどといった場合はガソリン代の精算が必要となります。この手間を省くために距離ごとに規定を作りガソリン代として支給することはあり得るはずです。
また、宿泊費に関しては地域ごとに金額を決めて宿泊費として支払う企業もあります。
宿泊費は比較的高額になりますし、一時的とはいえ立て替えるのが難しい従業員がいることも考えられます。そのため、常識的な金額であれば非課税として認められるでしょう。
参考資料として、産労総合研究所の「国内・海外出張旅費に関する調査」と公務員の「旅費業務に関する標準マニュアル」があります。
まず、産労総合研究所の調査から①日帰り出張の日当、②宿泊出張の日当、③宿泊費の平均額をまとめると次のようになります。
日帰り日当 | 宿泊日当 | 宿泊費 | |
社長 | 4,458円 | 4,598円 | 14,095円 |
部長 | 2,666円 | 2,900円 | 9,835円 |
一般社員 | 2,094円 | 2,355円 | 8,605円 |
また、公務員の規定では日帰り出張の日当は総理大臣で3,800円、国務大臣で3,300円。宿泊費は総理大臣で19,100円、国務大臣は16,500円(大都市圏の場合)です。
必ずしもこれらの金額以下である必要はありませんが、大幅に上回ると税務調査で指摘される可能性は高まるでしょう。
日当だけで1日2万円みたいな設定はさすがに無理筋じゃないかと。
そんな訳ない!〜怪しい情報にツッコミ〜
ネットでは悪意があるのか、単なる無知なのか分かりませんが、怪しい情報が溢れています。
特に日当関連は「とにかく非課税」といったような都市伝説が一人歩きしている傾向があるので、見聞きした話にツッコミを入れてみようかと。
ホテル代は会社が精算して宿泊費を出せば丸々ポケットに入れられる
通達知らないの?アホなの?
ここまで読んで頂いている方は理解されていると思いますが、非課税となる日当や宿泊費はあくまでも経費精算を不要にするためのもの。
当然ながら実費精算をしていればそれが会社の経費で、日当や宿泊費は全て課税されることになります。
1日2万円で年間200日出張すれば400万円非課税で貰える
仮に本当に200日出張していれば日当や宿泊費を支給すること自体は認められるでしょう。
ただ、既に説明した通り日当や宿泊費はそこから実費を支払うことになります。
毎日三食誰かに食事を奢ってもらい、公園で寝れば400万円をポケットに入れることは可能かもしれませんが、そんなこと年間200日もしてたら倒れますよね。
っていうか、どこで風呂入るのよ。
5kmでも移動すれば日当を出せる
その程度の移動でどんな実費が発生するんですかね?
こんなルールにしていたら日本の営業職は毎日ランチ代を会社負担で食べられることになってしまいます。
もちろん、ランチは出張しようがしまいが発生するので、これを経常的に負担すれば非課税な訳がないですよね。
非課税として認められるのは特定の人に偏った制度ではないという条件もあります。親族以外の社員にもこんな日当を出してくれるなんて太っ腹な会社ですね。
まとめ
日当や宿泊費が実費を上回れば一部が無税でポケットに入ることになりますが、通常は一回あたり数百円やせいぜい千円ちょっとの話です。
確かに、上限スレスレの宿泊費を設定してカプセルホテルに泊まれば一回で1万円以上をポケットに入れることも可能かもしれません。
ただ、バリバリ仕事をして稼いでいる社長でそんなケチくさいことをしてる人を私は知りません。
ちなみに、最近では出張の手配をアウトソースできるサービスもありますので、こういったものを利用することで事務作業の手間を省くことも可能だと思います。
ケチくさい節税策としてではなく、業務全体の効率化という観点で出張旅費のルールを考えて頂ければ。
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