こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
2025年7月20日に参議院議員選挙が実施されます。
争点となるのは様々な分野がありますが、この記事では「財政」「社会保障」「税金」の3分野に焦点を当て、各党の具体的な政策案とその背景にある考え方を詳しく比較分析します。
なお、取り上げるのは次の10政党・政治団体としています。
自由民主党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、社会民主党、日本共産党、れいわ新選組、参政党、チームみらい
Contents
各政党の政策概要
ここでは、各政党・政治団体の主要政策と理念を概観します。
自由民主党
- 経済、社会保障、地方創生、外交・安保、憲法改正を「5つのアクション」として示し、責任ある財政運営を重視しています。
- 赤字国債に頼った減税や高所得者のみに有利な不公平な減税は行わない方針です。
公明党
- 「物価高を乗り越える経済と社会保障の構築」を全体テーマに、物価高克服、現役世代の所得増、社会保障の充実などを重点政策としています。
- 国民生活の負担軽減のため、減税と給付の適切な組み合わせを重視しています。
立憲民主党
- 「物価高から、あなたを守り抜く」をキャッチコピーとし、物価高対策を最優先。
- 食料品消費税のゼロやガソリン税の暫定税率廃止、現金給付などを掲げ、財源には政府基金の取り崩しなどを充てるとしています。
国民民主党
- 「手取りを増やす夏。」をスローガンに、消費税率の時限的5%への引き下げ、所得税の課税最低ライン引き上げなど、現役世代に恩恵の大きい減税を柱としています。
- 社会保険料の軽減、「子育て支援金」廃止と「教育国債」発行も掲げています。
日本維新の会
- 「社会保険料を下げる改革」を公約の柱とし、現役世代の負担軽減と経済成長を目指しています。
- 医療費全体の削減を通じた社会保険料の引き下げや、食品消費税ゼロ、ガソリン税廃止などの減税も掲げています。
社会民主党
- 物価高対策を最大の争点とし、「軍拡・大増税・新自由主義・原発推進・差別排外主義の流れを変える」ことを目指しています。
- 食料品の消費税即時ゼロ、最低賃金全国一律1500円への引き上げなどを掲げています。
日本共産党
- 「物価高騰から暮らしを守り、平和で希望が持てる新しい日本」を基本政策とし、消費税の廃止を目指し、緊急に5%に減税することを掲げています。
- 大企業・富裕層への減税・優遇の是正を財源とし、赤字国債への依存は否定しています。
れいわ新選組
- 「増税ダメ絶対 消費税廃止 インボイスも廃止」をトップスローガンに、物価高と経済不況克服のため、つなぎの現金10万円給付、社会保険料引き下げを主張。
- 富裕層への課税強化を徹底するとしています。
参政党
- 「教育・人づくり」「食と健康・環境保全」「国のまもり」を3つの重点政策としています。
- 国民負担率を35%に制限し、消費税の段階的廃止、インボイス制度の即時撤回を提案しています。
チームみらい
- AIエンジニアの安野たかひろ氏が設立した新党で、「テクノロジーで、誰も取り残さない日本をつくること」をビジョンに掲げています。
- 物価や賃金の動向に応じて税と社会保障を自動で見直す「滑らかな税制・社会保障制度」の構築を目指しています。
政策分野別比較分析
財政政策
各政党の財政健全化、経済成長、予算配分に関するビジョンと計画を比較します。
政党名 | 財政健全化へのスタンス | 主要な財源確保策 |
---|---|---|
自民 | 「経済あっての財政」の考えで経済再生・経済成長を通して財政健全化 | 成長による自然増収 |
公明 | 国の資産を運用するファンドの新設を目指す | ファンドを活用し運用 |
立憲民主 | 財政の透明化・無駄の削減で健全化 | 政府基金の取り崩し、外特会の余剰金 |
国民民主 | 財政健全化について具体的な言及はないものの、経済成長による税収増を想定していると思われる | 経済成長による税収増と思われる |
維新の会 | 行財政改革による無駄排除 | 予備費の見直し 議員定数3割削減 などによる行財政改革 |
社民党 | 財政健全化に対する記述無し | 防衛費削減 |
共産党 | 赤字国債への依存否定 | 大企業・富裕層への課税強化 軍事費等の削減 |
れいわ | 積極的な財政出動 富裕層からの再分配 | 累進法人税・所得税強化 金融資産課税導入 |
参政党 | 国民負担率35%制限 プライマリーバランス黒字化目標見直し 国債発行による積極財政 | 積極財政(国債を財源とする政府支出) |
みらい | 物価・賃金動向に応じた税・社会保障の自動見直し 税額・制度適用の「壁」「崖」撤廃 | 政党交付金の国民生活への活用 |
税制政策
消費税、所得税、社会保険料など、税制に関する各政党の改革案を比較します。
政党名 | 消費税 | 所得税 | 社会保険料 | その他税制 |
---|---|---|---|---|
自民党 | 消費税減税には否定的。赤字国債に頼った減税は掲げない方針 | 物価上昇に合わせた基礎控除等の適時の引上げをはじめとした所得税の改革などを進める。 | 年金の底上げについて触れるものの、社会保険料に言及なし。 | 暫定税率の廃止は議論を進めるという表現にとどまる |
公明党 | 消費税の軽減税率導入は公明党主導。物価対策として消費税を今すぐ下げるべきではない。 | 基礎控除等の額を適宜引き上げていく 通勤費、食事補助の非課税上限を引き上げ 奨学金の返済額を所得控除 | 予防医療、医療DXなどで社会保険料の上昇を抑制 | 暫定税率の廃止 |
立憲民主 | 食料品の消費税を原則1年間、最大2年間ゼロ | 給付付き税額控除の導入 人的控除などの見直し 退職所得控除を1年あたり60万円へ 食事代補助の非課税上限の引き上げ | 社会保険料の事業主負担軽減などで手取りを増やす。社会保険料の上限を見直し、富裕層に見合った負担を求める。 | ガソリン税の暫定税率を廃止 |
国民民主 | 消費税率を5%への時限的引き下げ(実質賃金がプラスになるまで継続) | 所得税の課税最低ライン「年収の壁」を178万円に引き上げる 年少扶養控除の復活 | 後期高齢者の窓口負担を原則2割にするなど負担の見直し。 教育国債で子ども子育て拠出金の廃止。 | ガソリン税の暫定税率を廃止 年末調整制度の見直し(全員確定申告も視野) |
維新の会 | 食品の消費税を2年間ゼロ | 「勤労税額控除」を導入 | 「社会保険料を年間6万円下げる抜本改革」を公約の柱とし、医療費全体の削減(病床削減、OTC類似薬の保険適用見直しなど)で実現 | ガソリン税の暫定税率の廃止 |
社民党 | 食料品の消費税を即時ゼロ | 金融所得を総合課税化 | 社会保険料の負担割合を労使で1:1から1:3に変更し、中小零細企業の負担増分は公費助成で補填 | 法人の内部留保課税 |
共産党 | 消費税の廃止を目指し、緊急に5%に減税。インボイス制度も廃止。 | 家賃減税の導入 富裕層への課税強化(株式譲渡、配当を中心) | 高額所得者の年金保険料の「頭打ち」を見直し、応分の負担を求める 均等割・平等割を廃止し、子どもの国保料をゼロに、国民健康保険料を抜本的に引き下げる | 情報なし |
れいわ | 消費税廃止 インボイス廃止 | 累進所得税の強化 金融資産課税の導入 | 国民健康保険や介護保険などの社会保険料の負担を国費で補助することで引き下げる。 | 法人税の累進化 |
参政党 | 消費税の段階的廃止 インボイス制度の即時撤回 | 税制の種類を約50から約10に削減 金融所得の税率引き上げ・累進化 | 予防医療を推進することで、過剰医療や割高な薬価代など社会保障支出を見直し、社会保険料を軽減 | 従業員分配と技術・設備投資への税制優遇の強化 |
みらい | 連続的な計算で壁のない「滑らかな税制・社会保障制度」を構築 | 年少扶養控除の復活 給付付き税額控除など壁ができない仕組みの導入 | 現役世代の負担を過度に増大させない 有効性に応じた負担区分の導入 | 社会保険を税方式へ |
消費税の公約について整理すると次のようになります。
なお、チームみらいについては消費税について詳細な言及がなかったため、省略しています。
まとめ
与党である自民党は財政健全化を重視しつつ、責任ある政権与党というスタンスに立っています。
一方、野党は国民生活に直結する課題への迅速な対応を前面に押し出しています。立憲民主党は食料品消費税ゼロなど家計支援を重視し、国民民主党は「手取り増」に焦点を当てた減税策を提案。日本維新の会は社会保険料の大幅引き下げと行財政改革を主張しています。
社会民主党や日本共産党、れいわ新選組は、富裕層や大企業への課税強化、消費税の減税・廃止を掲げ、所得再分配の強化を強く訴えています。
参政党は国民負担率の制限や教育国債発行など独自の国家戦略を提示し、チームみらいはテクノロジーを活用した「滑らかな税制・社会保障制度」の構築を目指しています。
個人的な見解ですが、自民党や立憲民主党のマニュフェストは量・質ともに充実していると感じています。ここはさすが政権与党、野党第一党という感じですね。
(もちろん、政治的なスタンスは大きく異なりますが)
一方で、国民民主党や維新の会などは年収の壁や社会保険料の問題などを打ち出して、現役世代に響く公約を掲げている印象です。
そして少し驚いたのはチームみらいです。
マニュフェストの切り口はAIの活用などやや独特ですが、ボリュームもありしっかり作りこまれている印象です。
また、マニュフェストのページにAIチャットボットが実装されており、内容の検索するだけでなく、意見を投稿することもできます。
今回は税制や社会保険制度などを中心に比較しましたが、皆さんの中で優先順位の高い政策から比較検討して一票を投じて頂ければと思います。
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