こんにちは、ソーシャル税理士の金子(@innovator_nao)です。
この1年ぐらいでDXや業務効率化に加えてAIというキーワードもよく耳にする機会が急増しましたよね。
しかし、単に「AIを導入すれば効率化できる」と考えてしまうと、逆に非効率になるケースが少なくありません。
私も税理士として業務改善をサポートしていますが、「問題に対してツールを導入する」というアプローチで失敗しているケースを数多く見てきました。
ツールに課金したものの業務全体は楽になるどころか、余計に複雑になるみたいなケースもあったりします。最悪ですよね。
そこで、今日は「業務改善で考えるべきこと」について、税理士の視点から具体例を交えてお話しします。
Contents
AIやツールを導入したら本当に効率化するのか?
多くの企業でよくあるのが
・名刺の管理が煩雑なので名刺管理アプリを導入する
・資料の作成が手間なので自動化ツールを入れる
・承認プロセスが面倒なのでデジタル化する
これって、問題に対して解決策らしきものを考えているようですが、実は根本原因を見ていないのでうまくいきません。
私も税理士として様々な企業を見てきましたが、このような対処療法的なアプローチで失敗している例をたくさん見てきました。
経費精算ツール、勤怠管理ツール、文書管理ツール、コミュニケーションツールなど多くのツールを導入している会社も多いですが、それが個別の問題だけを見て導入を決めた場合はどうなるか。
その結果は「ツール管理に時間を取られて本来の業務が非効率になった」というオチかもしれません。
これが「ツール導入ありき」の危険性なんですよね。
例えば経理周辺の業務だと次のような事例は結構あります。
よくある問題: 「通帳の記帳が面倒で、手入力も大変」
間違った対応: 通帳をスキャンしてデータ化するアプリを導入
特に最近はAIを活用して通帳をデータ化するサービスも増えているので、活用しているという方もいるでしょう。
でも、そもそも紙の通帳って必要ですか?
ネットバンキングを使えば、取引履歴はデータで取得できます。
API連携で会計ソフトに繋げば日付や金額の登録ミスは起こりません。
わざわざ銀行に行って通帳記帳をして、それをスキャンしてデータ化するなんて、無駄な工程だらけですよね。
また、Excelやスプレッドシートで従業員の経費精算を行っている会社も多いと思います。
この場合はこんな対応をするケースを見たことがあります。
よくある問題: Excel経費精算の入力や承認作業が面倒
間違った対応: 紙での提出から社内メールでExcelファイルを提出
これも、そもそもExcelで経費精算する必要があるのかを考えるべきです。
freeeなどの会計ソフトには経費精算機能があるので、そこで処理すれば会計処理まで自動化できます。
なお、別システムであっても会計ソフトや給与計算ソフトに連携できる経費精算システムもあるので、必ずしも会計ソフト付帯の経費精算サービスである必要はありません。
ただ、システム連携機能もないExcelを使い続ける意味はないでしょう。
これらの例に共通するのは、既存の業務プロセスを前提として、それを効率化しようとしている点です。
でも本当に必要なのは、業務プロセス自体を見直すことなんです。
ここの手を付けないと非効率な業務を残したままツールだけが増えてサクラダファミリアみたいな業務フローになるだけです。
業務改善の正しい手順
Step1:業務全体を把握し、見える化する
まず大切なのは、問題となっている業務だけでなく、その周辺業務も含めて全体像を把握することです。
私が顧問先で業務改善をする際も、「誰が・何に対して・どうやって」を整理します。
例えば経費精算なら
部門長が ・社員に ・ 経費精算書の作成依頼
社員が ・ 上司に ・ Excelで作成した経費精算書を印刷して提出
上司が・印刷されて経費精算書と添付の領収書をチェックする
(誤りがあれば)社員が・上司に経費精算書を再提出
上司が ・ 経費精算書を ・ 経理部と人事部に回す
経理部の社員が・経費精算書を・会計ソフトに手打ちで登録する
人事部の社員が・経費精算書を・給与計算に反映する
といった感じです。
一つ一つを見ていくと結構な手順が発生していたりします。
そして、部門でどんな業務が発生しているのかというのは、他の部門の社員は知らなかったりします。
これを見える化することで、無駄な作業があるというのを各部門で把握することができるようになります。
Step2:業務の存在理由を問い直す
業務を整理したら、「なぜこの業務があるのか?」を問い直します。
先ほどの経費精算の例で言えば
Q:なぜExcelの経費精算書が必要なんですか?
A:社員に立替経費を登録させ、上司がチェックするため
Q:なぜ経理部の社員は手入力で立替経費の仕訳を登録しているんですか?
A:印刷物で回ってくるので、これしか方法がないので
Q:それなら会計ソフトに連携するシステムを導入しては?
A:その方がトータルで負担が減りますね
結論:Excelの経費精算書は不要
みたいな感じですね。
そもそも、こういった回答ではなく「以前からそうだったので、考えたことがなかった」みたいな返答も結構あるのですが。
このように、業務を整理して不要なプロセスを洗い出した上で、その解決策としてデジタルツールやAIを導入するという手順が本来の形だと思います。
例えば経費精算のプロセスを改善するとこのようになります。
社員がfreeeの経費精算機能でレシート撮影・申請
上司がfreee上で承認
会計データと給与計算に連携
このように、改善前の業務フローと比べると無駄な業務が無くなっているのが分かりますよね。
業務改善を進める際の注意点
私が業務改善の際に心がけているのは、「特殊なスキルがなくても運用できる仕組み」を作ることです。
例えば、複雑なマクロを組んだExcelファイルを作ったとします。
確かに効率的かもしれませんが、そのファイルを作った人が退職したら「修正もできないし、なぜそうなっているか誰も分からない」みたいな状態が発生します。
結局、「10年前から使っているけど、なぜこの仕組みがあるのか誰も知らない」みたいな状態になったりするんですよね。
なので、業務改善をする際には次の点を意識しています。
標準的なツールを使う
独自のシステムや複雑なカスタマイズは避け、freeeやGoogleワークスペースなど、多くの人が使えるツールを選んでいます。
シンプルな設定にする
高度な機能は使わず、誰でも理解できる設定で対応できるようにすることが多いです。
複雑な機能を使用すると、先ほどの「誰も解決できないマクロファイル」みたいな状態が発生する可能性があるためです。
マニュアル化する
導入した操作方法の手順などをマニュアル化するようにしています。
操作方法の問い合わせなどで管理者の時間が浪費されてしまっては本末転倒なので、利用する社員が参照できるマニュアルを整備しておくべきです。
まとめ
本当の効率化とは対症療法的な対応ではなく、業務全体を整理して無駄な業務を削減することから始まると思います。
多くの人が「今の業務を効率化するツール」を探していますが、そもそも「その業務・手順は必要なのか?」を問い直すことが最も重要です。
ツールはあくまで手段であって目的ではありません。
「無駄な業務を削減して時間を捻出したい」という目的を達成するために、まずは業務そのものを見直し、その上で本当に必要な部分だけにツールを活用するという発想が必要です。
特に、経理や総務の業務は「昔からそうやっている」という理由で続いている作業が結構あったりします。
デジタル化・IT化が進んだ今、根本から見直せば劇的にシンプルにできることが多くあるので、「どこから手をつけて良いか分からない」という方は、専門家に相談してみることをお勧めします。
外部の視点で見ることで、当たり前だと思っていた業務の無駄が見えてくることがあるはずです。
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最初にしっかりと仕組みを作れば、あとはどんどん楽になります。「面倒だから」と先送りせず、ぜひ一度業務全体を見直してみてください。
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