こんにちは、ソーシャル税理士の金子@innovator_naoです。
2018年から大幅改正となった配偶者控除と配偶者特別控除。
・記載内容が複雑
・自分と配偶者の両方の情報を記入する必要がある
といったことから、ミスが多い書類です。
ここでは、配偶者控除申告書の記載方法を間違いやすいポイントを中心に解説していきます。
制度の概要については、こちらの記事にまとめてありますので、ご覧ください。
Contents
配偶者控除申告書の記入方法
前提として、配偶者控除または配偶者特別控除を適用する人のみ記入が必要です。
フルタイムの共働きなど、明らかに制度の対象外の人は記入する必要はありません。
配偶者控除申告書はこのようになっており、大きく分けて4つ記入する箇所があります。
上から順番通りになっていませんが、①から順番に確認した方が無駄がないので、このような順番にしました。
①ご自身と配偶者の所得状況の計算欄
②ご自身の所得金額の記入欄
③配偶者の所得金額の記入欄
④配偶者控除・配偶者特別控除の計算欄
となっています。
それぞれの記入のポイントを見てみましょう。
①ご自身と配偶者の所得状況の計算欄
ご自身の所得は「あなたの合計所得金額」、配偶者の所得は「配偶者の合計所得金額」の欄に記入します。
収入、所得とは何かを理解していないと正しく記入できませんので、しっかりと確認しておきましょう。
お給料かそれ以外で所得の計算方法が異なりますので、少し解説しておきます。
お給料の場合
(収入)600万円例えば、給与収入が600万円の人の場合、
(給与所得控除)600万円×20%+54万円=174万円
(給与所得)600万円-174万円=426万円
となります。
お給料以外の場合
配偶者が個人事業主など、お給料以外の収入がある場合の計算方法です。
個人事業主であれば事業所得、開業届を出さずに副業レベルであれば雑所得、不動産収入があれば不動産所得など、それぞれに合った所得を計算します。
具体的な計算方法ですが、
・事業所得、不動産所得の場合
収入ー必要経費ー青色申告特別控除=所得
*青色申告特別控除は10万円または65万円です
・雑所得の場合
収入ー必要経費=所得
となります。
事業所得と不動産所得の場合には青色申告特別控除を引いた金額になる点にご注意ください。
実際の経費の金額を集計するところが、給与所得とは違います。
しかし、ここで問題が・・・
年末調整の書類は11月、遅くとも12月頭には提出していると思います。
12月が終わらないと実際の金額が分からない!!
そうなんです。個人事業の場合は、提出時点で確実な金額を書くことは不可能です。
そのため、提出時点での見込みの数字を記入することになります。
お給料とそれ以外が混在する場合
上記で解説した計算方法で算出した所得を合算して判定します。
例えば、配偶者の給与収入が80万円、副業の雑所得が30万円だとしましょう。
その場合は、合算した110万円が配偶者の合計所得金額となります。
②ご自身の所得金額の記入欄&③配偶者の所得金額の記入欄
配偶者控除申告書には「上記の*1(*2)に転記してください」との文字が。
しかし、転記する前にご自身の所得金額(①)と配偶者の所得金額(②)を確認してください。
①が1000万円を超えている(1000万円ジャストはOK)
②が123万円を超えている(123万円ジャストはOK)
このどちらかに該当する場合、
配偶者控除も配偶者特別控除も使えません!
なので、これ以上記入するする意味はありません。完全に時間の無駄です。
①が1000万円を超えている、②が123万円を超えているという条件のいずれにも該当しない場合は、②ご自身の所得金額の記入欄・③配偶者の所得金額の記入欄に正しい金額が記入されているかをチェックしましょう。
それぞれ正しい金額になっていれば、配偶者控除・配偶者特別控除の計算に移ります。
④配偶者控除・配偶者特別控除の計算欄
2018年から、自身の所得金額と配偶者の所得金額を掛け合わせて計算することになったため、かなり分かりにくくなってしまいました。
それぞれの所得金額を下記の表に当てはめて、配偶者控除・配偶者特別控除の金額を計算します。
配偶者控除・配偶者特別控除の注意点
記入されているのが収入か所得かを確認
よくある例ですが、
所得見積額:103万円
と書かれている配偶者控除申告書をよく見かけます。
そのまま判断すれば対象外ということになりますが、恐らくはパート収入が103万円と言いたいんだと思います。
この状態で提出すると、確認する人は間違いなく困惑します。
収入が103万円で扶養ってこと?それとも本当に所得が103万円なの?
収入金額ではなく、所得金額が書かれているかチェックしておきましょう!
配偶者の年齢をチェック
配偶者欄に生年月日を記入するところがあります。
12月31日時点で配偶者が70歳以上の場合と70歳未満の場合とで控除額が異なるので、きちんと確認しましょう。
事実婚の場合は?
所得税の配偶者控除は、法律婚に限定されています。
古くさいなぁ、と思うことはありますが、法律がそうなっているので仕方ありません。
離婚した場合は?
配偶者控除・配偶者特別控除は12月31日時点で要件を満たしている場合に適用が可能です。
残念ながら年内に離婚している場合は、いくら(元)配偶者の所得が低くても適用できません。
配偶者控除の欄には(元)配偶者の名前が書いてあるけど、扶養控除申告書の配偶者欄は「無」になっているという場合を何度か見掛けたことがあります。
明らかに矛盾していますので、12月31日時点でどういう状況なのかで記入するようにしましょう。
自身の所得や配偶者の所得の見込みが分からない場合
配偶者控除・配偶者特別控除の額は、本来12月31日にならないと分かりません。
そのため、所得の見積額をいくらにすれば良いのか分からない、という場合もあると思います。
そのような場合は、予想よりも高めの所得で見積額で記入しておくことが良いと思います。
実際の控除額が確定した際の処理ですが、
・(1月中であれば)年末調整のやり直しをして再計算
・本人が確定申告を行う
のいずれかになります。
最初の年末調整で予想よりも高めの所得にしておけば、年末調整のやり直しや確定申告をした際に還付になるので、その方が気持ち的には良いかな、というところです。
【年末調整をチェックする人に向けて】前年の状況とのチェックを忘れずに
ご覧の通り、配偶者控除申告書の記載内容はかなり複雑です。
そのため、
よく分からないから書くのやめた!
と配偶者控除申告書を空欄で出してしまったという人もいるかもしれません。
前年に配偶者控除や配偶者特別控除の適用をしているにもかかわらず今年の配偶者控除申告書に記入がない場合は、念のため本人に確認をした方が良いでしょう。
配偶者がフルタイムで働き出して対象外になっているかもしれませんが、少しの優しさで控除漏れを防げるかもしれません。
まとめ
配偶者控除・配偶者特別控除のポイントをまとめるを以下のようになります。
・自身と配偶者の所得見込額をチェック→対象外なら無駄な作業をしない
・給与所得控除が正しく計算されているかをチェック
・記入されている配偶者の所得金額が収入金額になっていないか確認
・配偶者の年齢をチェック
・離婚や事実婚などの場合に正しく記入されているかチェック
・前年の年末調整と見比べて、大きな変化がないか念のため確認
かなり面倒な配偶者控除と配偶者特別控除。
頑張って確実な処理をして行きましょう!
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